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2021.01.15 コンプライアンス

判例変更と総務省行政課長通知の経緯

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2 行政課長通知の内容

 総務省は12月17日付で行政課長名による通知「地方議会の議員に対する出席停止の懲罰に関する審決の申請について」(総行行第306号)を発出した。文書は、「11月25日の最高裁判決において、地方議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否が、司法審査の対象となるというべきとされたことを踏まえ、別添文による質疑応答の取扱いが適切であると考える」とし、通知の趣旨が述べられている。別添文には新たな質疑応答が示されたほか、これに関連して1973年の行政実例(自治行第57号)を削除した旨
も記されている。
 まず、新たな質疑応答である。

○地方議会の議員に対する出席停止の懲罰に関する審決の申請について
問 地方議会における出席停止の懲罰は、その適否が専ら議会の自主的、自律的な解決に委ねられるべきであるということはできず、地方自治法第255条の4の規定による審決の申請の対象となるものと考えるがどうか。
答 お見込みのとおり。
理由 最高裁判決において、「出席停止の懲罰の性質や議員活動に対する制約の程度に照らすと、これが議員の権利行使の一時的制限にすぎないものとして、その適否が専ら議会の自主的、自律的な解決に委ねられるべきであるということはできな
い」、「普通地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は、司法審査の対象となるというべきである」とされたことを踏まえたものである。

 ついで、「以下の行政実例は削除されたものと承知されたい」と述べ、削除する行政実例を示した。

○ 地方自治法第255条の3(現行法では第255条の4)の規定に基づく審決の申請に係る疑義(昭和48年5月1日、自治行第57号 滋賀県総務部長宛 行政課長回答)
問1 地方議会における出席停止の懲罰は、単なる内部規律の問題であつて、地方自治法第255条の3(現行法では第255条の4)の規定による審決の申請の対象となりえないものと考えるがどうか。
問2 仮りに審決の申請の対象となるとしても、出席停止期間がすでに経過している場合には、当該処分取消しの利益がないとして却下すべきものと考えるがどうか。
答1 お見込みのとおり。
答2 1により承知されたい。

* * *

 本通知の内容は、取消訴訟と行政不服審査の関係に関わるものである。懲罰等の処分に対して取消訴訟を提起しようとする場合、「知事の審決を経た後でなければならない」(大阪地裁1969年7月17日決定)との審決請求前置主義の考え方がとられてきた。一方、自治省(当時)はこれに関連し、上記1973年行政実例を示し、懲罰のうち出席停止処分については、地方自治法255条の3(現行法では255条の4)の規定による知事審決の申請の対象外であるとする見解を示した。この見解は、1960年最高裁判決の「地方議会の議員に対する出席停止の懲罰の適否は一律に司法審査の対象とならない」としたことに相応するものである。
 しかし、1960年最高裁判決が変更されたことにより、1973年行政実例は削除されざるをえなくなったのは当然の帰結である。なぜなら、司法・行政とも、出席停止の懲罰については「議会の内部規律の問題であり、自治的措置に委ねられている」とする考え方では一致していたからであり、判例変更により両者の共通する考え方の根拠自体が喪失したのである。こうして新たな質疑応答が示されるに至った。
 新旧見解を要約整理すると、つまるところ次のとおりである。
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