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2020.03.05 コロナ対応

【緊急寄稿】新型肺炎に対応する議会運営に!一般質問辞退は次善の策、傍聴中止は住民自治からの逸脱

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傍聴中止は地方自治原則からの逸脱

 議会は開催されなければならないが、その際「公開」が原則である。議会の存在意義は、「公開と討議」である。傍聴を中止とすることは、危機状況であっても首肯することはできない。「普通地方公共団体の議会の会議は、これを公開する。但し、議長又は議員三人以上の発議により、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。」(自治法115)はこの文脈で理解できる。「但し書き」は、秘密会の例外性を厳格に規定している。新型コロナウィルスへの対応は秘密会の理由にならない。
 そこで傍聴の際の対応であるが、傍聴者へのマスク着用や消毒等の徹底の要請、傍聴席間隔を広げること、などが想定できる。また、傍聴自粛要請(お願いであって中止ではない)は、インターネット中継やケーブルテレビ中継といった媒体がある場合に可能である。

住民に対する説明責任を!

 一般質問の取り下げといった議会運営の変更は、危機状況の下での極めて例外的な措置である。すでに指摘したように、一般質問は「最もはなやかで意義ある発言の場」だけではなく、「住民からも重大な関心と期待をもたれる大事な議員活動の場」である。それゆえ、一般質問の取り下げには慎重であるべきだ。だから、そうした決断を行うのであれば、その理由を明確にすることが前提である。その説明事項には、今後の対応(第二回定例会の運営(予定であっても))、そして当初想定していた質問項目一覧等を含める必要がある。

日頃から危機管理の議論を!

 BCPは業務継続計画である。議会版BCPも策定されるようになっている。一般に、地震、風水害のほか、その他(自然災害のほか、大規模火災などの大規模な事故、原子力災害、新型インフルエンザなどの感染症、大規模なテロなどで、大きな被害が発生した場合、又はそのおそれがあるもの)も対象に入っているのが多い。
 議会版BCPには、議会中、閉会中という時期区分とともに、安否確認、会議の招集要件といった事項が明確にされている。ただし、会期日程にまで及んでいない。会期日程は、それぞれの会期中(招集日の初日)に決める柔軟なものであるから、あらかじめ議会版BCPに明記することは馴染まない事項であるが、会期日程についての基本的な考え方を明記することも必要だと思われる。
 例外状況(リスク)をあぶりだすことは必要である。ただし、例外だけの強調では、例外が生じた場合、ルールなしに首長等による統制が生じる可能性がある(江藤 2011)。例外を明確にしてその対応をルール化することは、通常状況の中に例外状況を含みこみ、その例外を制御する可能性を高める。議会版BCPの策定は、この文脈で重要である。同時に、その際の議会運営の変更は、住民自治の原則を保持しつつ行うことが前提である。その原則を日頃から確認しておく必要がある。
 
〔参考文献〕
江藤俊昭(2011)「地域政治における首長主導型民主主義の精神史的地位」『法学新報』118巻第9号
江藤俊昭(2016)『議会改革の第2ステージ』ぎょうせい
江藤俊昭(2016-2020)「新しい議会の教科書」『議員NAVI』2016年5月25日号~
全国町村議会議長会編(2019)『議員必携 第11次改訂新版』学陽書房

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