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2019.01.28 政策研究

自治体議会改革は、社会とどうつながっているか?

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地域社会の政治構造の変化

 もう1つ、伝統的な地縁型の社会関係、あるいは利益配分に連なるネットワークにいる人の比率がどんどん小さくなっているために投票率が下がっている面もあります。つまり、基礎自治体の保守系の無所属の地方議員が国政の保守政党に系列化される政治構造が細ってきました。この構造が住民を捕捉できている比率は下がってきています。中選挙区制で、 複数の国会議員が同じ選挙区内でそれぞれに得票を競い合う構図から、小選挙区制で同一政党からの候補者はそもそも1人になりました。衆議院議員候補者にとって選挙区内の地 方議員を系列化する必然性は薄れ、そもそも地元の市町村議会議員選挙よりも衆議院総選挙の方が相対的に高い関心を集め、投票率も高いのですから、国政選挙と地元の地方議員との距離ができています。

 地域レベルでの社会の関心と組織、国政レベルでの社会の関心と組織との伝統的な関係が消えたわけではないのですが、相対的に存在感が薄くなっています。その中に消費者化した住民がいて、消費者主権という感覚で「お客様は神様です」という主張がされると、無視はできません。選挙でも専らそういう消費者感覚に訴えて支持を得ようとする政治勢力 も登場してきます。地元の市町村議会議員というよりも、国政選挙の争点としてそういう課題が争点になり、地元の地域社会で顔の見えている人間関係からは想定できないような量と方向性をもって、国政選挙では票が動く。そういう政治を無視したら選挙に勝てませんが、地元の自治体の首長選挙、議員選挙では、相対的に投票率は低く、国政選挙での争点化とはかなり違った選挙が展開されています。

 残念ながら、最も根本的な問題点に応えた争点化が、国政レベルでも自治体レベルでも効果的にはできていないように思います。国でも地方でも無駄の排除や効率化の余地はまだまだあるでしょう。それはそれでやるべきです。しかし、それをどんなに頑張ったとしても、これから想定されている税収減と行政需要の増大に見合った規模の成果は期待でき ないという不都合な事実を直視して、それならばどうしていくべきなのかを問うことが必要です。それは、消費者としての住民の欲求を満足させる公約の提示だけではできないことです。最悪の場合には、消費者感覚に応えるために本質的な問題から目をそらす副作用さえ出てきかねません。

 例えば、負担感が大きくても、その負担を引き受けておいた方が最後は安心だと思われるような、あるいは安心を与えるような政策運営が必要だという政策路線は、これからの重要な選択肢の1つであるはずです。公共サービスが責任を持つ範囲は狭くなるけれども負担を減らすことを選ぶのか、責任を持って今後も公共サービスを確保していく代わりに これまで以上に負担が増えることを選ぶのか、という2つの方向性が想定できます。現実の政策選択としては、その中間のどこかでバランスをとるということになるのでしょうが、まずは選択の軸が提示されなければ始まりません。今は少なくとも一方の軸が見えていません。負担増によって将来の公共サービスへの安心と信頼を確保しようという方向性を、説得力を持って訴える人が、国、都道府県、市町村のレベルのどこかで現れてこないとい けない。負担増を堂々と提起して「その方が安心できるから良かった。それは支持したい」 と思われるような政治勢力が、少なくとも選択肢の一方として拮抗する政治勢力になって こないと選挙の争点にもなりません。消費者感覚で、良いモノをより安く、消費者に負担を求めるな、ということでは、問題は解決していきません。

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