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特集 住民のための議会とは何か

2019.01.15 政策研究

市民フリースピーチ制度で自治を再生 ─犬山市議会の取組み─

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議会の役割を明確化させるフリースピーチの効用

 山岡さんの発言内容を重視した市議会はフリースピーチ後に全員協議会を開き、対応を協議した。議員間討議を重ねた結果、当該課題に関心を持ち、かつ、環境政策にも明るい議員に対応を委ねることになった。担当となった議員が独自調査を行い、9月定例会で一般質問するというものだ。つまり、議員個人としてではなく、議会として執行部を問いただし、改善を促す役回りである。大役を任されたのは、久世議員だった。
 久世議員はフリースピーチで問題提起した山岡さんに改めて詳細を尋ね、市の担当課にもヒアリングを行った。その上で本会議場での一般質問に臨んだ。答弁に立った副市長は期限切れした基本計画をそのまま放置していたことを認め、「市政運営上、あってはならないことで、大変反省しています。穴があったら入りたいくらいです」と、平謝りした。そして、「市を取り巻く環境の変化や関係諸法令の改正等に対応するため、改訂する作業に着手したところです」と、答弁した。
 久世議員の質問はここで終了とはならなかった。「市の環境政策がおろそかになっていたことについて、私たち議員も反省しなければならない」と、市の落ち度に気づかずにいた議会の責任についても言及し、「市民フリースピーチを実施して本当によかった」と指摘したのだった。
 こうした一般質問が展開されていた9月定例会期間中に3回目のフリースピーチが開催され、山岡さんが再登壇したのである。当然のことながら、議場内の誰もがその発言内容に固唾を飲んで注目したのである。
 山岡さんの2度目のフリースピーチは、市の環境施策の取組みに関する具体的な問題提起であった。遅れている取組みや抱える課題を具体的に示し、改善すべき方向を示す政策提言というべきものだった。
 3回目のフリースピーチ後も市議会は全員協議会を開き、それぞれの発言内容への対応を協議した。山岡さんの発言については、清風会を中心に対応することになった。
 「市民フリースピーチを開くようになって議員の仕事が明確になってきたように思います。行政が自治体の最高決定権者で、議会は行政に要望や意見を述べるのが仕事だと思っている議員ではダメです。議会こそ最高決定権者なので、だからこそ議会の中で議論し、論点・争点を明らかにして、物事を決めねばなりません。その自覚と責任感があるかどうかです」
 久世議員はこう語り、「行政に質問しても行政にとって都合のよいことしか返ってこないというケースもあります。議会(議員)も万能ではないので、補うものとなっているのが、市民フリースピーチではないでしょうか」と、その意義を強調した。
 犬山市議会に市長派という議員は存在せず、全ての議員が是々非々の姿勢で執行部と向き合っているという。与党と野党で二分された地方議会ではなくなっているのである。議員が連携せずに個別に執行部と対峙(たいじ)するのではなく、議員間での協議を重ねた上で、議会としてまとまって執行部と向き合っているのである。つまり、二元代表制の本来の姿に近いものが生まれつつある。

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