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2019.01.15 政策研究

市民フリースピーチ制度で自治を再生 ─犬山市議会の取組み─

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市民の発言に戦々恐々の執行部

 犬山市議会の中でフリースピーチへの温度差があるのが、実態のようだ。もっとも、それは当然ともいえる。20人いる議員の中に縄張りを侵されると思い違いする人がいても不思議ではないからだ。しかし、そうした一部議員よりも職員の方が、むしろ、フリースピーチを嫌っているのかもしれなかった。久世議員はこう指摘した。「執行部側はフリースピーチでここまでいろいろなことが出てくるとは思っていなかったのでは。最初は(市への)要望ばかりになると思っていたのではないでしょうか。ところが、実際にやってみたら、(登壇者から)まっとうな指摘がなされ、しかも議員からの質問にもしっかり答えてくださっています。職員にすれば、フリースピーチで都合の悪いことをばらされたくないと思うのではないでしょうか」。
 傍聴した3回目のフリースピーチで、議場の雰囲気が一変し、張り詰めたものになった場面があった。5人目の山岡雅俊さんが登壇したときで、発言内容は「犬山市における生物多様性保全の取組みについて」。議場内が緊迫したのには、それなりの理由があった。山岡さんは前回6月のフリースピーチでも発言し、行政の不作為、不手際を鋭く指摘したからだ。今回はいわばその続編に当たるもので、何が飛び出すかと戦々恐々とする人が大勢いたのである。
 山岡さんが6月のフリースピーチで発言したのは、「犬山市の環境基本計画についての要望」についてだった。市の環境政策に関するごく普通の要望や意見表明かと思われたが、内容は市や議会にとって衝撃的なものだった。簡単に説明したい。
 先進的なまちづくりで知られる犬山市は、環境保全を進める自治体としても高く評価されていた。その原点というべきものが、2001年度に策定された「犬山市環境基本計画」だ。その計画づくりは犬山市らしいやり方で進められた。環境保全に関心のある市民や学識経験者らが「環境市民会議」を結成し、100回を超す会議やワークショップを重ねて練り上げていったのである。こうした市民との協働で策定された計画は、2002年度から2010年度を当面の計画期間とした。つまり、当初の計画期間は8年前に終了となっていた。期限切れとなった計画は、当初の目的が達成できたと判断されれば廃止となり、そうでなければ計画を見直して再スタートとなる。それが本来のあり方だ。ところが、そうなっていない仰天の実態を、山岡さんがフリースピーチの場で明らかにしたのである。
 「市民と行政が一体となって、住みよいまちづくりを進めるには、市民が環境基本計画をよく知らないといけないと思います」
 山岡さんはこんな指摘をした上で本論に入っていった。「県や近隣市が環境基本計画を5年ごとに見直しているのに対し、犬山市は策定後16年間も見直しておらず、新しい法令や政策が計画に反映されていない」と、市が計画をつくりっ放しにして放置している実態を本会議場で明らかにしたのである。さらに、環境基本計画が市のホームページに掲載されていないことも指摘し、「今後、市民の意見を十分取り入れ、早急に計画を見直すこととホームページでの公開を要望します」と、意見表明した。
 1人の一般市民が市民生活に多大な影響を及ぼす行政の重大な不作為、不手際、落ち度を暴き出し、その改善を強く促したのである。

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