〈マニフェストの論点(暫定)〉
論点1: 会派や議員はマニフェストを提出できないわけではない。マニフェストの内容は明確でなければならない。
論点2:マニフェストは比較可能でなければならない(マニフェストSW等)。
論点3: 会派のマニフェストは重要であるとともに、会派のある議会における議員マニフェストと会派のない議会における議員マニフェストは区別すべきである。
〈マニフェスト評価の論点(暫定)〉
論点1: 達成度だけではなく、プロセスを明確にする。例えば、質問との連動を意識する。
論点2: 自己評価から出発する(評価書の発行)。そして、第三者評価(評価書の発行、検証大会)も加味する。
2 争点の変容──住民自治の進化:二元的代表制=機関競争主義の定着
(1)地域経営をめぐる争点:縮小社会への対応
① 地域社会の変動と今後の地域の争点
地域は急激に変化している。「地方消滅」(そして「地方創生」)、「自治体戦略2040構想」、あるいは小規模市町村議会の「2つのモデル」(集中専門型と多数参画型)など、危機をあおる言葉が散見される。「危機」だけではなく、地域に根ざした自治体をつくり出した教訓は、平成の大合併の成果を見れば理解できるであろう。
こうした事態は、地域が多様化、より正確にいえば地域住民が分断化される時代ともいえる。今日、「2025年問題」、「2040年問題」がクローズアップされている。超高齢化、低所得者の増加、などである。これにAIの導入や外国籍住民の増加を加えたい。まさに、「総中間層」といわれた時代とは全く異なる時代が生まれる。いわば、地域住民に明確な亀裂線(富める者とそうではない者)が生じる時代でもある。そこで少なくとも2つの課題が浮上する。
1つは、地域の伝統に基づき新たな価値を創造することが必要となろう。そのためには、多様な、したがって地域で分断化された住民の意見を集約し、統合し、地域の発展につなげる必要がある。各地で実践されているNPOを含めた住民の活動は重要である(フードバンクなどを想起されたい)。行政も重要ではあるが、本来多様な議員によって構成される議会がその役割を担う。その際、議会がその役割を発揮するには、住民との協働が不可欠である。
もう1つは、それぞれの自治体では対応できない課題があることである。そこで、自治体間連携が浮上する。「圏域」への交付税の交付といった議論ともつながるが、それ以前に、現行において市町村の住民、そして議会がそれに実質的にかかわっているとはいいがたい。行政主導の自治体間連携である。住民自治の推進のためには、住民は、そして議会はどのように地域連携にかかわるかを検討する必要がある。
こうした課題を検討したい。公共施設の統廃合問題は両者にかかわる。これらの課題に、「住民自治の根幹」としての議会はどうかかわるか。このことは、信頼される議会の創造であり、今日問題となっている「議員のなり手不足」問題の解消の方途を探ることでもある。
② 縮小社会への対応を争点に:シビル・ミニマム再考
縮小社会に向かう時代が到来している。人口ビジョン・地方版総合戦略や公共施設等総合管理計画が各自治体で策定されている。もちろん、これらの策定は中央集権の強化に連なる方向ではある。この手法の問題を意識しつつ、縮小社会を意識した地域経営が求められている。拡大志向、社会資本の充実を目指した高度成長期とは全く異なる争点が浮上する。もちろん、保育園充実要望のような高度経済成長期と同様な分野もある。極めて単純化していることには留意していただきたいし、財政投下の優先順位をめぐって住民を含めて考えることを強調したい。
1960年代〜1970年代のシビル・ミニマムを再考することになる(松下 1971)。拡大期のシビル・ミニマムは社会資本拡充運動によって実現に動き出した。それに対して、今日は、社会資本の削減を念頭にシビル・ミニマムの水準を確定することが課題となる。もともとシビル・ミニマムは討論の広場を伴っていた。今日のシビル・ミニマムはそれを引き継ぐとともに、協働も広がっている。これらを組み込みながらシビル・ミニマムの確定を行うことになる。そこで、議会がその確定に積極的にかかわる必要がある。そのためには、選挙の際にこのシビル・ミニマムが争点化される必要があり、住民自身がこのことを理解する契機にもなる。
シビル・ミニマムは、科学的な数値化によって導き出されるものではない。住民、議員・会派、首長等による討議を経た合意によって生み出されるものである。つまり、シビル・ミニマムは、討議による成果であり(千葉 1995)、マニフェストはその素材となる。