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2018.05.10 議会改革

地方議会のゆくえ(下) ──総務省「町村議会のあり方に関する研究会 報告書」を読む──

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(3)全国町村議会議長会と全国市議会議長会等からの異論
 報告書に対して、意見が提出されている。全国町村議会議長会、全国市議会議長会である。同意見は、報告書が野田総務大臣に提出された際に大きく取り上げられた。これらは、本稿とも関連がある。紹介した後に本稿との関連を確認しておきたい(括弧内(【 】)の数字は、本稿の章・項を示している)。

① 全国町村議会議長会からの異論(「町村議会のあり方に関する研究会報告書に対する意見」2018年3月26日)
 全国町村議会議長会は、5つの論点から報告書に対して意見を提出している。以下の項目の後に、その理由がそれぞれ説明されている(本稿では省略)。
 (ⅰ)研究会設置趣旨の「町村総会のより弾力的運用」について研究すべきである。【4(2)】
 (ⅱ)現場からの声、自主的な取組みを重視すべきである。【4(1)】
 (ⅲ)議会制度を検討する場合に、町村のみを対象とすること、及び人口によって差を設けることに反対する。【4(3)】
 (ⅳ)議会制度の制度設計において、パッケージで類型化した制度を考えることに反対する。【2(1)(2)(3)】
 (ⅴ)議会の権限を低下させる制度改正(議決事件の限定など)に反対する。【2(1)】

② 全国市議会議長会からの異論(「『町村議会のあり方に関する研究会』報告書に対する全国市議会議長会会長コメント」2018年3月26日)
 (ⅰ)「集中専門型議会」について【2(2)、3(2)】
 ・議会と市町村長や「議会参画員」との距離が狭まりすぎ、かえって自治の現場における合意形成が困難になる。
 ・専業議員を想定しながら、民間勤労者を含めた当面の有為な人材の確保策も不明瞭で、生活に困らない年金生活者や資産家、自営業者などの少数議員によって議会が構成され、議会参画員の議事参加で補完するとはいえ、多様な民意を反映する議会とならないおそれを過小評価するべきではない。
 ・公務員の立候補退職後の復職制度の創設は、公務員の政治的中立から慎重に検討すべきである。
 (ⅱ)「多数参画型議会」について【2(2)、3(1)(3)】
 ・多数の兼業議員によって議会活動が担われることにより、議員としての自覚が希薄化し、議会全体の機能低下を招かないか、懸念される。
 ・なり手不足対策の観点から、議会権限を限定すれば兼業禁止を撤廃してよいと簡単に結論できるのか。さらに、地方分権の潮流の中で、累次にわたり議会権限が拡充されてきたこれまでの政策に逆行するものであり、契約・財産等に関する案件の除外と議員の請負禁止の撤廃をバーターするような発想は短絡的ではないか、と危惧している。
 ・議会の開催も夜間・休日が基本で平日昼間は年間数日と想定していることも、市町村の行政が複雑化・専門化する中、限られた審議時間で適切な処理が可能なのか、また、兼業議員のためではなく地域住民のために、本当に意義のある現実的な開催方法なのか、先進議会の実態を踏まえて慎重な検証が必要である。
(ⅲ)今回提言された2つの議会類型は、いずれにせよ議会の議決権の限定と議員の請負禁止の撤廃に関する部分を除いて、基本的に現行法と条例によって多様な対応が可能なものである。これを立法によって議会権限の限定を含む規制の枠に押し込めるような方向は、議会の自主性・自律性を拡大してきたこれまでの政策と相容れない。【2(1)】

③ マスコミの動向
 報告書が公開された翌日、いわゆる全国新聞、地方新聞等が大きく取り扱った(3月27日付)。その中で、「社説」として扱ったのは、管見の限りでは2紙、読売新聞と朝日新聞である。読売新聞(「町村議会改革 過疎の自治を支える人材確保を」)は、報告書の紹介がされているが、報告書への具体的なコメントはなされていない。「二元代表制の趣旨を損なわないか、今後慎重な議論も必要となる」、「民意をくみ取る方法は必ずしも一様である必要はあるまい。『地方のことは地方で決める』との地方自治の趣旨を大切にしたい」、「議会のあり方や議員の待遇を総合的に検討する必要がある」、と議論を広い視点から考えることを示唆している。
 朝日新聞(「町村議会改革 国のお仕着せが過ぎる」)は、「首をかしげざるを得ない」と断言し、3つの理由が示されている。①「議会の機能が低下しかねない」【2(2)】、②「2種類について、自治体に原則としてパッケージで選ばせる姿勢が地域の自主性を尊重する分権改革に逆行している」【2(1)】、③「研究会が大学教授らだけで構成され、議論が非公開ですすんだこと」【本稿では論じていない】、という3つの理由である。3点目については、単なる研究会報告書であって、素材にすぎないという見解もあろうが、1点目、2点目は本稿の視点と基本的に一致している。
 今後、『議員NAVI』も含めて、雑誌等でも議論が展開することになるであろうし、そうなってほしい。

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