【第29次地制調答申(2009年)】
〈契約の締結及び財産の取得又は処分に係る議決〉
契約の締結及び財産の取得又は処分については、本来、執行機関限りで処理するという考え方もあるが、現行制度においては、地方公共団体の財政運営に与える影響等にかんがみ、政令で定める基準に従い条例で定めるものについては、議会の議決を要するものとされている。
議会の監視機能を充実・強化するためには、議決事件の対象について条例で定めることができる範囲を現行よりも合理的な範囲内で拡大すべきである。
〈勤労者等の立候補や議員活動を容易にするための環境整備〉
現在、議会の運営としては、会期を一定期間に定め、平日昼間に集中して会議等を開催する例が一般的である。平日の朝から夕方にかけて仕事に従事している勤労者が議員として活動することを容易にするため、例えば、夜間、休日等に議会を開催するなどの運用上の工夫を図ることが考えられる。
また、勤労者について、立候補を容易にするため、これに伴う休暇を保障する制度や、議員活動を行うための休職制度、議員の任期満了後の復職制度等を導入することなどが考えられる。この点については、我が国における労働法制のあり方やその背景となる勤労者の意識、勤務実態等にも関わる課題であることから、まずは、議会の活動を社会全体で支えるべきであるという意識の醸成に努めつつ検討していくべきである。
議員の構成については、女性の議員が男性の議員に比べて割合が低く、偏りが見られることから、議会の運営上の工夫を含め、女性の議員をさらに増やすための方策について、諸外国の取組などを参考としつつ検討すべきである。
公務員については、現行制度において、職務専念義務が課せられ、また、公務の中立性の観点からその政治的行為が制限されているほか、公職への立候補の制限、地方公務員については地方議会の議員との兼職の禁止等の規制がされている。
公務員が地方議会の議員として活動することは、行政分野に通じた人材が議員として活動することとなり、有益な面があることから、公職への立候補制限の緩和や、地方公務員と当該地方公務員が所属する地方公共団体以外の団体の議会の議員との兼職禁止の緩和などの方策が必要ではないかとの意見がある。
この点については、公務員が政治的活動と密接不可分である議員活動を行うことについての社会的な理解が得られることが前提となることから、公務員の職務の公正な執行や職務専念義務のあり方等にも配慮しつつ、前記のような休暇制度、休職・復職制度等の導入に関する検討と併せて、引き続き検討の課題としていくべきである。
<br
</br
【第28次地制調答申(2005年)】
〈幅広い層からの人材確保等〉
住民を代表する議会の議員に幅広い人材を確保できるように、女性や勤労者が議員として活動する上での便宜に資するよう休日、夜間等に議会を開催するなどの運用上の工夫をすべきである。また、制度面では、勤労者が議員に立候補でき、また、議員として活動することができるような環境の整備、さらには地方公共団体の議会の議員と当該団体以外の地方公共団体の職員との兼職を可能とすることも検討すべき課題である。
<br
</br
〈小規模自治体における議会制度のあり方〉
民意の適切な反映、効率的な議会運営等の観点から、少なくとも小規模な自治体については、現行の会期制度を廃し、週1回夜間などに定期的に会議を開くようにするなど、その規模に適した新たな制度を選択できるようにすることを、今後検討すべきである。
注:〈 〉の中は、答申の節・項のタイトルである。また、本稿と特に関連する部分については下線を付している。