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論評

2018.05.10 議会改革

地方議会のゆくえ(下) ──総務省「町村議会のあり方に関する研究会 報告書」を読む──

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5 なり手不足問題解消の正攻法

(1)なり手不足の要因
 様々な議会が、議員のなり手不足問題に取り組んでいる(1)。例えば、長野県飯綱町議会は、議会だよりモニターや政策サポーターなどを制度化し、参加した住民が議会を知る場を提供し、信頼される議会・議員になるべく努力を重ねている。また、同議会は、議員報酬の低さを打開するために、報酬増額について住民と考える場を設置し、結果として増額した。さらに、地域力の活性化のために、集落振興支援基本条例を議員提案し、制定した。これらによって、2017年の飯綱町議会議員選挙では、無投票から脱した。
 なり手不足の解消も多元的に取り組まなければならない。まず、現行法体系の下でも可能な施策を考えよう。なり手不足の要因と連動した対応である。表5は、なり手不足の要因とその解消方策を単純化したものである。要因として、議会・議員の魅力の衰退、議会・議員の活動条件の貧弱性、地域力の低下が想定できる。

表5 議員のなり手不足の要因とその解消の方向表5 議員のなり手不足の要因とその解消の方向

(2)なり手不足解消の正攻法
① 議会・議員の魅力の衰退への対応
 そもそも議会が信頼されていなければ、住民はその場で活動する気にはならないであろう。議会が「住民自治の根幹」として作動すること、それによって信頼される議会を創造することが、なり手不足解消の正攻法である。
 そのためには、従来の「口利き」ではない議員活動が重要である。近年、財政の規律向上、口利き防止条例の制定などによって、「口利き」は困難になっている。議員はそれとは異なる議員活動、つまり「住民自治の根幹」となる議会をつくり出すための活動をすることが重要である。同時に、行政の不備を指摘するとともに、現状の財政状況の厳しさを住民に対して説明すること、つまり従来の「口利き」とは逆のベクトルの活動も担う必要がある。
 議会報告会は、こうした新たな議会を知ってもらうためにも重要な手法である。同時に、これに広聴機能を持たせ、議会力アップにつなげることによって、住民からの信頼を勝ち取ることもできる。広報・広聴機能をさらに強める目的で飯綱町議会が行っている議会だよりモニター制度や政策サポーター制度は、議会・議員の魅力をアップさせるには有用である。

② 議会・議員の活動条件の貧弱性への対応
 適正な議員報酬等の整備が必要である(2)。なり手不足問題が激化しているのは、報酬の低い小規模町村が圧倒的である。議員報酬が月額17万円以下の自治体では、急激に無投票当選者率が高まる。このことを考えれば、議員報酬に係る課題の解消は急務である。住民に説明するためには、報酬等の根拠をそれぞれの議会が議論し、再確認することが必要である。
 もちろん、月額報酬30万円でも無投票当選自治体があることを考慮すれば、これだけが要因ではない。報酬等の条件が悪いことで立候補を躊躇(ちゅうちょ)することはあるが、議会・議員そのものに魅力がなければ立候補する意思を住民は持たないであろう。そもそも、報酬等の増額は、多くの住民が議会・議員に魅力を感じていなければ実現困難である。報酬増額の条件整備は、議会・議員の魅力をつくり出すことを前提としている。
 なお、そうであっても、例えば小規模自治体では、報酬を一気に大幅に引き上げることは困難であろう。そのため、「半議員半X」(大森彌氏の提案)は一考に値する。
 そして、それらを住民と考えることは不可欠である。住民から引き下げの声もあるからという消極的な理由だけではなく、議会・議員活動の役割を住民と考える機会にもなるからである。

③ 地域力の低下への対応
 地域の活性化(集落支援)、若者の増加策と立候補に向けた施策(U・J・Iターン、地域づくり協力隊等)も積極的に取り組む必要がある。前項②(議会・議員の活動条件の貧弱性への対応)とも連動するが、長崎県小値賀町議会の若年議員を報酬で優遇する試み(2018年3月条例廃止)もこの文脈で理解できる。
 立候補する対象を増加させる方策も考慮してよい。女性の積極的登用や、「半議員半X」である。また、サラリーマン層の立候補者を増加させることを意図した恒常的な夜間議会は、議会力がダウンしないことを前提に模索してよい。
 それらと同時に、現行法体系では立候補が困難な住民を立候補しやすくする法改正も必要となる。

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