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論評

2018.04.10 議会改革

地方議会のゆくえ(上)──総務省「町村議会のあり方に関する研究会 報告書」を読む──

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(2)報告書の概要
① 報告書の構成
 報告書の構成は、表1のとおりである。なり手不足の現状と原因の探求から始まり、研究会設置の契機となった町村総会の弾力的運用の有無の検討に入り、結論として弾力的運用は「困難」という結論を導出し、それに代わる議会像を提案し、そのための新たな制度の設計、制度改正を検討するという構成を採用する。この構成自体は、至極当然といえよう。とはいえ、原因分析は的確か、町村総会の弾力的な運用を「困難」として結論付けてよいか、新たな議会像自体は住民自治を進める上で適切か、といった問題を内包している。これらの論点は、後に検討しよう。まず、報告書の概要を確認する。

表1 総務省「町村議会のあり方に関する研究会 報告書」目次表1 総務省「町村議会のあり方に関する研究会 報告書」目次

② 報告書の論点
 報告書が内包している課題・問題点については後述するが、その前に報告書の論点を確認しておこう。

(ⅰ)要因
 なり手不足の要因には、6項目が挙げられている。議決事件(広範な事項を議決の対象としているために、専門性が求められるとともに時間がとられ、一般の有権者が参加しにくい)、定数(定数が少ない議会ほど議員の負担感が増加している)、議員報酬(他の職業と兼業するには議員の活動時間が長いにもかかわらず、議員報酬だけでは生計を立てていけない)、兼職禁止及び兼業(請負)禁止(これらにより実態的影響が大きい)、議会運営(平日昼間の議会運営のため兼業議員としての活動に対して各企業等の理解が得られにくい)、勤労者の参画(「公民権行使の保障」があるものの、その保障が十分ではない)、といった要因である。
 活動量が多いにもかかわらず、昼間開催では、また「公民権行使の保障」の不十分性から、兼業(請負)もできないし、生計を立てるには議員報酬は低すぎる、といった認識である。当然であるが、後に指摘する新たな2つの議会の提起の伏線となっている。

(ⅱ)町村総会
 町村総会について、日本における歴史的経緯を踏まえて、「ほぼ観念し難い」、高齢化により移動が難しい有権者が増加し「会議の開催をより困難にする」と結論付ける。その上で、諸外国の事例を参考にして、「町村総会の実効的な開催が可能か否か」を検討する、として、以下3つの方向が検討されている。
 〈定足数を考慮しないこと〉町村総会における定足数を国会の定足数(3分の1)と同水準にまで引き下げる検討もあり得るかもしれないが、これを充足するだけの住民が実際に参画可能であるかは疑義があるほか、定足数を引き下げた場合に、議会に代わる議事機関としての正統性を保持し得るかについて慎重に考えるべきである。
 〈審議と採決を分離し、採決方法として住民投票を採用すること〉討論を経ることなく、住民の意思表明のみによって団体意思の決定を行う場合に、憲法に規定する議事機関といい得るのか疑義があるほか、そもそも頻繁に住民投票を行うことは現実的ではない。
 〈全員ではなく、一定の住民代表から構成すること〉その代表者を選出する必要が生じることから、結局選挙により議員を選出することが必要となる。
 これらの検討から「住民が一堂に会する町村総会については、現在、実効的な開催は困難であるものと考えられる」と結論付ける。その上で、「議員のなり手不足の対策としては、いかに小規模市町村にとって持続可能な議会の姿を実現するか、という観点で検討を進めることが必要である」とし、新たな議会を提起する。

(ⅲ)現行議会における議会改革の取組み
 今日、議会基本条例などに規定された議会改革の方策などが定着している。これらによって、なり手不足という課題に成果を上げている自治体もある。研究会も「各地方議会においては、これらの自治体の取組内容や成果を踏まえ、自主的取組を積極的に展開していくことが重要と考えられる」という認識を持っている。しかし、行論の関係では、「自主的に取り組んでいる」議会が提起する法律改正等については触れず、すぐに報告書の主眼である新たな2つの議会を提起する意味を確認している。つまり、「一方で、現行法令の枠内では課題解決に制約があることも事実である。……小規模市町村における現下の議員のなり手不足にかんがみれば、これらの市町村の実情に即した議会のあり方を議論し、町村総会とは異なる制度的解決策を喫緊に提示する必要がある」というものである。

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