議会BCPのPDCAサイクル
大津市議会BCPの全体的なつくり込みとしては、基本的な行動指針を定めつつ、個別にも発生確率が高い災害対応を優先して時系列行動表を整備しているものであるが、現状で全ての非常時対応が網羅されているものではない。それは全体としての完成度は60%であっても実践や訓練の中で得た教訓を生かして、機動的に計画を改定し充実させていくことを前提としたものであるからだ。100%の完成度にこだわって施行を遅らせるよりも、荒削りでも早期の施行を優先する方が市民利益にかなうとの判断からである。
そのためにも計画の中では、最低年1回の訓練、研修を義務付けている。施行初年度には早速、本会議中に大地震が発生したとの想定で、議会独自の防災訓練を実施した。その内容は、議場での安全確保と避難誘導、職員による安否確認、議会災害対策会議の設置運営、避難所運営(HUG)などである。
この訓練で得た教訓のひとつは、落下物から身を守るために本会議場の机下に潜り込むはずが、椅子が固定式のため実際には困難であることが判明したことである。抜本的対応には議場の大改修が必要となるが、当面は自治体の意思決定の中枢メンバーの安全確保のため、折りたたみ式ヘルメットを議場に配備するとともに、傍聴席にも背もたれクッション型の防災頭巾を配備した。
そして、防災訓練では口頭で行った安否確認が意外に時間を要した反省から、「議会BCP安否状況確認カード」を追加作成して手帳に挿し込み、記入済カードを集約する方式に改めた。これもよく考えれば議会局職員の人数よりも議員の人数の方が多いので、全てを聞取方式で行えば時間を要することは想像に難くないはずであるが、実際には訓練を行わなければ気がつかないということも多いのである。
また、実際に議会BCPが発動された際には、BCPに規定する議会に参集すべき議員の中に、規定内容を失念して参集しなかった議員がいたことから、非常時の行動指針をコンパクトにまとめた「大津市議会BCP携帯ハンドブック」を作成して全員に配付した。これは、計画書本体はA4判の大部となることから、手帳に挟めるよう工夫し、参集基準等が日常的に目に触れるようにと考えたものである。
このように大津市議会BCPは「想定外を想定する」をキーワードにつくり込まれたものではあるが、常に使える計画であるかを検証し、機動的に改正していくことを前提としている。そのため、訓練などで得た教訓は、即座にフィードバックしてPDCAサイクルを回す「生かして育てる計画」として、今後も継続的にブラッシュアップしていくものである。