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シリーズ自治体の災害政策

2018.01.12 政策研究

自治体の危機管理体制整備において議会は何ができるか ~大津市議会における全国初の議会BCP策定から現在まで~

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「想定外を想定する」実務上の特徴

 大津市議会BCPは、申合せ等の内部規範ではなく、議員提案で制定した大津市災害等対策基本条例に規定する「議会の責務」条項に根拠を置くものである。その意義は、もちろん市民への議会ルールの「見える化」を実現するという大命題もあるが、実務的には議会BCPが単に定めただけのものとならないように、実効性を担保するための予算確保の必要性である。その実践例としては、次に挙げるもののほか、後述する議場配備した折りたたみ式ヘルメットや傍聴者用防災頭巾などがある。

(1)タブレット端末の活用
 災害当初に、安否確認から始まる議員との通信手段の確保については、電話回線は通じない可能性が高いため、議会ICT化の一環で導入したタブレット端末を活用することとしている。議員には常時携帯をお願いし、災害対策本部や議会災害対策会議からの情報は、全てタブレット端末へ一斉送信することとしている。従前は、市内の被災情報等は、議員の自宅へファクシミリで送信していたが、全議員に送信を完了するには数時間かかるほか、災害時には議員自身も自宅を離れて現場へ赴くことを考慮すると、情報提供の方法を再考する必要があったからである。
 逆に、地元での災害現場写真や動画などの議員からの情報は、タブレット端末から議会局へ送信してもらって集約し、執行部に情報提供することとしており、災害情報の双方向化に寄与している。

(2)サバイバルローラーバッグの配備
 大津市議会BCPには、議会への参集時に各自携帯すべきものとして、3日分の水・食糧を明記している。そして、単に定めるだけではなく、貯水タンクにもなるキャリーバッグに、3日分の水・食糧などを詰めた「サバイバルローラーバッグ」を、全議員、全議会局職員に配付した。非常時には、それを背負って参集することによって、規定の実効性を担保するものである。

サバイバルローラーバッグ

サバイバルローラーバッグサバイバルローラーバッグ

 配付当初には、議会になぜそのような装備がいるのかとの意見もあったが、筆者が公営ガス事業を経営する企業局在籍時に発生したガス幹線破断事故対応の際、現場職員の食糧確保に奔走した経験からの発想である。非常時にまとまった数の食糧を確保すること自体が大きな労力を要する。自分に必要なものは自分で確保してもらわなければ、結果的に正面展開させたい人員を後方支援に回さざるを得ず、貴重なマンパワーが大きく減殺されてしまうのである。
 自衛隊が災害対応においても最強組織であるのは、食糧補給、野営装備、医療施設など、現場活動で必須とされるものが、組織内で自己完結できるからである。もちろん議会は実力組織ではないので、同等の装備、能力は望むべくもなく、また、その必要性もない。しかし、補給線を絶たれた組織に、本来の機能発揮など望むべくもないことは歴史が証明しており、いかなる組織も非常時対応に資する最低限の装備は必須と確信しているからである。

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