――本心はどうあれ、本来の役割を果たすための議会改革に議員は反対だとはいえませんからね。
その後はそれほど苦しくなかったですね。外部の研究者やメディアから評価されたことが励みになりましたし、客観的な評価を受けたことで自分が取り組んでいる議会改革に確信を持てましたから。外部評価が議会改革を前に進める大きな力になったのです。
(飯綱町議会が初めて外部評価されたのは、2011年のこと。公募と要請で一般住民を集め、議員との議論や政策提言をしてもらう「政策サポーター」制度の導入が評価され、第6回マニフェスト大賞の審査委員会特別賞と優秀成果賞を受賞した。その後、議会改革関連の賞を毎年のように受賞している。)
――議会改革を進める上で議長の果たす役割は大きいですね。
そのとおりです。議長が頑張れば、議会力は間違いなくアップします。ただ議員力のアップは別問題です。私は、地方議会における議長の役割や議長はどうあるべきかといった議論をもっとすべきだと思っています。議長が議会改革のビジョンや意識をしっかり持ち、議員個々に熱心に語りかけることができるかどうかがポイントです。そして、ブレることなく議会改革を実践できるかどうかです。
――では、寺島さんは地方議会の議長はどうあるべきだと考えていますか。
議長は議会の中で誰よりもよく学ぶ人でなければならないと思います。そして、議会の中で誰よりも行政に精通し、誰よりも豊かな問題意識を持ち、地域住民のニーズや抱える課題についても誰よりも把握している人でなければならないと考えます。それぐらい議長の果たす役割は大きいものだと思います。
――議長だけでなく、地方議会そのものの役割もこれからさらに重要になります。
人口減少時代に入って十数年が経過しました。これにより地域社会がどのように変化したかをしっかり見極め、その変化に見合った新たな政策展開が求められています。人口規模縮小の時代にどのような政策展開をすべきなのか、行政や議会が問われています。例えば、人口が減少すれば予算規模も小さくなると思われがちですが、そう簡単ではありません。消防や水道、ごみ処理といった町のインフラを支える行政の仕事は人口が減ったからといって、削れるものではありません。その一方で、税収は減っていきます。選択、集中し、どのように事業を展開していくか、新しい政策が求められています。これからの地方議会は、「政策議会」というのが重要なキーワードだと思います。
――しかし、現実は行政のチェックすらおぼつかない地方議会がほとんどです。
(飯綱町議会も以前はごく一般的な議会にすぎなかった。というより住民から白眼視されるほどの大失態を演じ、改革に取り組まざるを得なくなったというのが実態だった。町の第3セクターが経営破綻し、町民に8億円もの負担を強いることになったからだ。チェック機能を果たさず、行政の追認機関でしかなかった議会・議員に住民の批判が殺到した。そのあまりの激しさに漫然と議員を務めていた人たちが後ずさりし、議会内で是々非々の姿勢を貫いていた寺島さんが議会改革をけん引するキーマンとして浮上したのであった。)
チェックや政策提言という議会の本来の役割を果たすためには、議員はどうすべきかと考えますか。
飯綱町議会の最後の定例会で、退任の議長挨拶をいたしました。その中で地方議員としての心構えなどについていわせていただきました。
地方議員としての議員活動を継続するには、「学ぶ議会・議員」を基調とする不断の努力が求められます。議員一人ひとりにとって最大の敵は、自分自身が惰性とマンネリに陥り、地域と住民の姿が見えなくなり、住民要求と行政課題が不鮮明になることではないでしょうか。それを克服して日々新鮮な気持ちで議員活動を前進させるためには、住民に寄り添い、豊かな問題意識を持ち、知的好奇心を旺盛にすることだと思います。このことは私自身への戒めでもあります。
人口減少時代が進み、地域と住民の中には新たな問題と行政課題が現れつつあります。政策に強い議会と議員こそ、住民に求められていると思います。
――地域の中で住民自治を担う優秀な人材を育て、地方議会に送り込むことこそが、究極の議会改革だというのが、寺島さんの結論でしょうか。それが「地域政策塾」の開講につながるのですね。
議員経験者は辞めた後も言動が注目されます。真価が問われると思います。議員だけでなく、役場職員もそうだと思います。議員や職員はその職を辞めた後も地域住民のために頑張らなければいけない。私はこれまで(議長時代に)町行政に対し主張し、提案してきた、集落振興事業などに真剣に取り組み、実践の先頭に立ちたいと思います。それから自宅で農家民泊を始めてみたいと思っています。