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なり手不足を考える

2017.07.25 なり手不足

自治の担い手の再生へ

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議員のなり手を養成し、バトンを渡す

 議員間の活発な討議で知られるのが、長野県飯綱町議会(議員定数15)だ。議決・監視・政策立案の3つの役割を果たす稀有(けう)な地方議会として注目されている。そんな飯綱町議会も無投票に近い選挙を繰り返すなど、議員のなり手不足に見舞われていた。議会は町の第3セクターの破綻を見過ごすなど、行政の追認機関でしかなかった。議員個々の力は弱く、どこにでもあるレベルのダメ議会だった。きっかけは「政策サポーター制度」と「議会モニター制度」の新設だ。議会活動への住民参加を広げるため、議会の方から住民の中に入り、開かれた議会に変えた。政策サポーター制度は、多種多様な住民が公募と要請でサポーターとなり、平日夜間と休日に集まって議員とともに地域課題について話し合い、政策提言するものだ。議会は住民の知恵を借りることで政策力をアップさせた。一方、住民は議会や議員を身近に感じるようになり、役割も知るようになった。議会モニター制度も同様で、議会の見える化が急速に進んだ。住民の目にさらされる議員は切磋琢磨(せっさたくま)するようになり、住民は議会の存在意義を実感するようになった。

写真1 飯綱町議会写真1 飯綱町議会

 こうした議会力をアップさせる諸々の取組みが、議員のなり手を養成する機能も発揮するようになった。よく学びよく働く議会・議員が住民の誇りになり、「私も議員になって地域に貢献しよう」という人が現れるようになったのである。10月に予定される飯綱町議選に5人の新人がすでに名乗りを上げており、このうち3人が政策サポーターと議会モニターの経験者である。飯綱町では議員報酬月額16万円を今年4月から17万4,000円に増額した。

無作為抽出で自治の担い手を募る

 無作為抽出の住民に自治体の事業仕分けや住民協議会などに参加してもらう取組みを推奨しているのが、政策シンクタンクの「構想日本」(加藤秀樹代表)だ。これは、住民基本台帳などから年齢や性別のバランスなどを考えて住民を抽出し、住民協議会などへの参加を募り、それに応じた人たちと行政や議会などが政策を話し合い、提言としてまとめるというものだ。ざっくりいうと、裁判員みたいなものだ。

写真2 滋賀県高島市で行われた住民協議会の様子写真2 滋賀県高島市で行われた住民協議会の様子

 これまでに全国45自治体で93回にわたって実施されており(2017年4月現在)、平均参加率は約5%。つまり、無作為抽出で案内状を送られた住民のうち、5%の人が話し合いの場に加わっていた。そのほとんどがこれまで行政や議会と接点のなかった人たちだった。まちづくりなどに関心や意識がありながら、関わり方が分からずにいた住民に、一歩踏み出すきっかけを提供することになる。実際、無作為抽出による住民協議会などに参加した住民は、その後、NPOを立ち上げたり、PTAの役員に立候補したり、地域で勉強会を組織するなど、まちづくりに積極的に関わるようになっている。議員のなり手候補にもなっているのである。
 ところで、こうした無作為抽出による住民参加を議会も積極的に活用したらどうか。例えば、議会を選挙で選ばれた専業議員と無作為抽出で選ばれた住民(議会員)の2本立てにするのはどうか。専業議員は少人数で、常勤・年俸制。議会事務局の仕事も兼ね、多選制限付き。一方、議会員は大人数で、兼業・日当制となる。もちろん、議会の開催は平日夜間か土日に限定だ。こんな議会があってもよいのではないか。
 地方議員のなり手不足は地域の衰退の表れであり、かつ、議会の劣悪化がもたらした現象でもある。地域がはまり込んでいる負のスパイラルを抜け出すには、何よりも本来の機能を果たす議会に再生させることが不可欠だ。議会が地域になくてはならない価値ある存在であれば、その一員となって地域を支えたいと志願する住民は少なくないはずだ。議員のなり手不足解消策が、定数をクリアすることを目指すものであってはならない。

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