地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

論評

2017.06.26 政策研究

極まる首相への忖度、強まる1強「印象操作」~政治主導に規範を~

LINEで送る

もり・かけ問題

 その忖度が極まった一つの例が、大阪府豊中市の国有地を森友学園に小学校用地として評価額の14%、1億3,400万円で売却されたことだと指摘されている。この開設を目指した小学校の名誉校長に安倍昭恵首相夫人が一時名誉校長になっていたことや、「安倍晋三記念小学校」の触れ込みで寄付を募っていたことが分かっている。
 さらに学園理事長だった籠池泰典氏が国会の証人喚問で昭恵夫人から100万円の寄付を受け取ったと証言している。籠池氏が財務省との値段交渉の過程で、首相との関係を言葉のはしばしに感じさせたことは十分に考えられる。その結果、財務省が忖度して、必要以上に値引きしたのではないかという疑いだ。
 もしそのような事実がないのであれば、財務省が森友学園側とのやり取りを書いた交渉記録を公表すれば済む話である。それを書類は廃棄したとしながらも、問題がないと言い張るから複雑化し、国会で根掘り葉掘り聞かれることになる。
 国会では2月に会計検査院が、衆院予算委員会でこの問題の検査を約束した。与党側はこの結果を待つよう主張したが、国会開催中には報告されていない。憲法上の独立した機関である会計検査院が、真相究明の最後の砦(とりで)ともいえる。政権を忖度せずに、存在意義を示せるか注目したい。
 次の忖度の事例として取り上げられた獣医学部の新設というのは、地域限定で規制緩和する政府の国家戦略特区を活用し、加計学園が愛媛県今治市に岡山理科大の獣医学部を2018年4月開学することだ。
 その経緯は、2016年11月9日の国家戦略特別区域諮問会議で追加の規制改革事項として「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う」と表明。「広域的に存在しない地域」と絞り込んだことで、京都府が求めていた立命館大学の獣医学部新設の構想が消えた。
 そして2017年1月12日の国家戦略特区の今治市分科会第2回会合で、今治市が求めていた加計学園の獣医学部の設置が決まった。今治市は3月3日、加計学園に対し建設予定地として市有地の無償譲渡と施設整備費の最大96億円の助成を決定。現在、文部科学省の大学設置・学校法人審議会が認可申請を審議しており8月末には認可、もしくは「判定保留」の結論が出る予定だ。
 学校法人加計学園の理事長は、首相の「腹心の友」である加計孝太郎氏。首相夫人の昭恵氏が学園運営の保育施設の「名誉園長」に就任していることもあり、獣医学部新設に関して、安倍首相の何らかの指示、あるいは、官僚らの忖度があったかに注目が集まっている。
 指示については、獣医学部新設について「総理の意向」などと内閣府側から言われたとする文書が報道され、文科省が会期末になって調査し、その存在をやっと認めた。
 これを受け内閣府側も調査、「総理の意向」といった発言はなかったとした上で、発言したとされる内閣府の審議官は「首相は常々、規制改革全般について『スピード感を持って』と言っている。非公式の場で首相発言に言及することは十分にあり得る」とも述べている。
 つまり、首相発言の引用が「総理の意向」と文科省側に誤解されたというストーリーに落とし込みたいようだ。文科省の役人がもし録音をしていたとしても、この状況では出せないであろう。出せば今でさえ危うい官僚人生が完全に終わることになるからだ。人事の公平性が損なわれれば、政治主導という名のパワハラになるかもしれない。この状況が続くとすれば、官僚こそ「働き方改革」が必要ではないだろうか。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る