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シリーズ自治体の災害政策

2017.05.25 政策研究

東日本大震災を受けて整備された最新の防災・復興法制について(その3)

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国土交通省国土交通政策研究所所長 佐々木晶二

 東日本大震災を受けて、防災の基本法である災害対策基本法は大改正され、さらに復興法制も整備されました。
 日本では今後も大きな災害が予測されていることから、読者の方々に最新の防災・復興法制をお伝えしようと思います。災害対応は総力戦ですので、地方公共団体の議員の方々も防災・復興法制の基本的枠組みをご理解いただき、地域の住民の命を守り、さらに、被災後の生活再建に行政とも連携して取り組まれることを期待しています。
 最終回の今回は、「復旧・復興対策」について述べます。復旧・復興対策は土木工事や建築工事が中心となるため、専門家に任せておけばいい、といった感覚があるかもしれません。しかし、これまで述べた「緊急事態」や「応急対策」と同様か、それ以上に被災者の生活再建に大きな影響を与えるものです。
 そのため、地方公共団体の議員の方々も、ぜひ一度目を通してください。技術的な難しいことは何も出てきません。
 なお、より詳細な内容は、今年2月に発行した、拙著『最新 防災・復興法制』(第一法規)をご覧いただければ幸いです。

応急仮設住宅

 応急仮設住宅は、災害救助法に基づく制度ですので、応急対策に位置付けることも可能です。しかし、東日本大震災での応急仮設住宅が現在も使われているように、相当長期に使用されるものですので、「応急」対策とは別に述べたいと思います。

(1)応急仮設住宅の建設
 応急仮設住宅は、自宅が、全壊又は全半壊(場合によっては半壊も含まれます)し、自力では住宅を得ることができない人に対して都道府県知事又は市長が建設します。
 その建設の基準は内閣総理大臣告示で定められていますが、特別基準としてこの基準が緩和されています。例えば、東日本大震災では実態として1戸当たり550万〜650万円程度、規模も20〜40平方メートルとなっています。
 実際に大きな災害が発生した場合には、地方公共団体では内閣府防災担当政策統括官から出される特別基準に注意する必要があります。
 また、応急仮設住宅の建設を円滑に進めるために、地元プレハブ業者や地元工務店と事前の協定を結んでいることが重要です。

(2)みなし応急仮設住宅(借上げ応急仮設住宅)
 応急仮設住宅は、原則は都道府県知事等が仮設建築物として建築するのですが、被災地の周辺に民間賃貸住宅などが存在する場合には、その賃貸住宅を借り上げて応急仮設住宅として供用することができます。
 東日本大震災の際には、みなし応急仮設住宅が多く活用され、その際には、都道府県知事等が借り上げて被災者にマッチングするケースに加え、被災者が自ら民間賃貸住宅を見つけてくるケースも認められました。
 被災地の周辺に民間賃貸住宅が存在する場合には、みなし応急仮設住宅として積極的に活用すべきとの意見もあります。しかし、みなし応急仮設住宅は被災地の周辺に分散してしまい被災者の生活再建のための大事な情報が届きにくいこと、被災地の復興に当たって民間賃貸住宅に空き家がないと、被災地に戻ってこようとする家族などの受け皿がなくなること、みなし応急仮設住宅に入っている被災者は生活再建をする意欲が乏しくなりがちなことなどが、東日本大震災の被災地では指摘されています。このような長所と短所を踏まえて、あらかじめ、応急仮設住宅の建設戸数とみなし応急仮設住宅の借上げ戸数を計算しておくことが大切です。

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