応急対策
巨大自然災害発生後72時間を経過して、救助活動から主に被災者の生活支援の段階での措置を対象とします。
(1)避難所の開設
避難所は、市町村地域防災計画に定められていますが、災害の発生後において、追加で新しく避難所を指定したり、さらに、民間建築物を避難所として指定することも可能です。
具体的な避難所の設置、運営で国の補助対象に当たるかどうかは、災害救助法及びそれに関連する政省令、大臣告示、さらに、事務処理要領で細かく規定されています。
例えば、民間建築物の借上費用なども補助対象になりますし、避難所運営のために地域の人を雇用する費用も一定の手続を経て補助対象となります。
拙著『最新 防災・復興法制』の参考資料編には、事務処理要領や東日本大震災、熊本地震の際の特例基準の通知が記載されています。突然、避難所運営を任された場合でも、避難所運営に関係する基準が本書に載っていることを記憶しておいてください。
(2)広域避難の実施
市町村の行政区域を超えた避難については、受入れ市町村は正当な理由なく受入れを拒否することはできません。
しかし、実際には、広域的な避難の受入れ計画を定めて、避難元の市町村と協定を結んでおくことが有益です。
広域避難の際の調整が市町村間でうまくいかないときには、都道府県知事又は内閣総理大臣が実施します。
なお、広域避難を受け入れた都道府県に対しては、国は、被災地の都道府県に代わって避難所運営など救助に要した費用を代位弁済します。
(3)被災者及び物資の運送
被災者、物資の運送は、都道府県知事がバス事業者や運送事業者に要請しますが、最終的には、バス事業者、運送事業者と運転手に対して従事命令を出し、強制的に業務を行わせることができます。
(4)安否情報の提供
都道府県知事及び市町村長は、個人情報保護条例にかかわらず、安否確認のために必要な氏名等の情報を内部で収集することができます。さらに、関係する消防機関や警察などにも情報を求めることができます。
(5)災害時の道路交通規制と自動車の移動
都道府県公安委員会は、災害が発生したとき、又は、まさに発生しようとするときには、緊急通行車両を除き、車両の通行を禁止することができます。
また、警察官又は道路管理者は、例えば豪雪に埋もれた自動車を自ら移動することができ、やむを得ない範囲では車両を破損しても違法とはならず、損失を補償すれば足りることになっています。
(6)罹災(りさい)証明書の発行
市町村長は、災害が発生した場合には、速やかに罹災証明書を発行しなければなりません。
特に、住家被害認定は、その後の応急仮設住宅への入居や被災者生活再建支援法の適用にも影響しますので、担当職員が認定基準を事前によく理解しておくとともに、実際の災害の際には、他市町村職員の応援や、建築士など専門家の支援を仰ぐことが重要です。
なお、応急仮設住宅については、発災後数年にわたって使用されることもあり、ハード面の整備とも関係がありますので、次回「復旧・復興対策」で一緒に説明をします。
次回(5月25日掲載予定)は、「復旧・復興対策」について述べます。
※書籍『最新 防災・復興法制』の内容紹介等については、こちらをご覧ください。
https://www.daiichihoki.co.jp/store/products/detail/102732.html