地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

条例REPORT

2017.04.10 議会改革

議会で条例を創る ~北九州市議会における議会提案条例を例に~(下)

LINEで送る

3 まとめに代えて

(1)条例創りの環境に差はない
 議会で条例を創ろうと考えたとき、その材料として存在するのは、現在ある憲法、法律、条例などの既存の法令、そして住民の声です。これは、すべての議会・議員に共通、かつ、平等に用意されています。ですから、議員提案条例を創るときに、自治体間のアドバンテージやハンディキャップは存在しないと考えられます。
 議会における条例創りの成果は、議員の皆さんの地道な活動のたまものです。世上、展開されている議会活動に関する運動論が生み出したものではありません。条例創りは今、議員の皆さんが毎日行っている住民のための活動の延長上にある営みなのです。
 その意味において、従来から議員の皆さんが担ってきた住民の要望や苦情を執行機関に届ける役割と、近年盛んになってきた議会における政策立案や条例創りとは連続しています。従来型の議員活動から条例創りや政策立案等にシフトすべきという関係にはありません。むしろ、条例創りのためには、今まで以上に個々の住民と接触していかなければなりません。
 条例創りに必要なのは、「条例とは何か、どういうものか」という自治法をはじめとした法制度に対する理解と住民の声です。ご自分の目と耳で、「条文」と「住民の声」をとらえてみてください。

(2)「ひと」の視点を持つ
 ここにムーミン谷があったとします。ムーミンがいます。パパやママやミーやスナフキンがいます。このムーミン谷をよりよいものにして、ムーミンたちのくらしを守るために「ムーミン市(町、村)」がつくられます。ムーミン市はあくまでシステムであり、ムーミンたちが幸せになる手段です。本当に大切なのは、「まち(ムーミン市)」ではなく「ひと(ムーミンたち)」です。条例創りは「ひと」の視点が欠かせません。また、条例創りに取り組むことによってそのことが理解できると思います。

(3)様々な住民の立場を考え、意見を聞く
 絵の具セットの24色は、均等な量ですべて混ぜ合わせると灰色になります。灰色自体は、くすんだ、さえない色です。黄色のような鮮やかな色にはほど遠い色です。
 しかし、この灰色は単なる灰色ではありません。すべての色を混ぜ合わせた上での「灰色」です。条例案を作成する過程に例えるのなら、いろいろな立場の住民のことを公平に考え、たくさんの住民の意見を反映したからこそ、くすんだ色になったのです。条例創りの過程においては、一度はつくられるべき大切な色なのです。
 その「美しい灰色」を、まちの課題を解決するために目指すべき色に近づけていく営みが、「条例創り」です。許される範囲を慎重に見極めながら黄色を増やし、別の色を減らして、まちに菜の花を咲かせるのです。黄色を増やすのではなく青や緑を増やした方が、結果として黄色に近づくかもしれません。とても困難な作業ですが、いろいろな工夫ができるはずです。決して、最初から他の色の存在を無視して、べったりと黄色で染めてはいけないのです。
 住民の皆さんからお預かりしている実印を生かして、議会の重要な役割である「条例を創ること」をそれぞれの自治体で進めていきましょう。


参考図書
◇森幸二『1万人が愛した はじめての自治体法務テキスト』(第一法規、2017年)
◇森幸二『自治体法務の基礎と実践』(ぎょうせい、2017年)

この記事の著者

議員 NAVI

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る