地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

条例REPORT

2017.03.27 議会改革

議会で条例を創る ~北九州市議会における議会提案条例を例に~(上)

LINEで送る

(2)北九州市中小企業振興条例
① 様々な制度への理解が大切

 この条例においては、中小企業の振興のために、市に対して中小企業への優先発注を促す規定がメインとなります。

○北九州市中小企業振興条例
 (市の責務)
第9条 1~4 (略)
5 市は、工事の発注、物品及び役務の調達等を行うに当たっては、予算の適正な執行並びに透明かつ公正な競争及び契約の適正な履行を確保しつつ、中小企業者の受注機会の増大に努めなければならない。

 しかし、これだけでは優先発注規定としては不十分です。次の項には、以下の規定が置かれています。

6 市は、地方自治法(略)第244条の2第3項に規定する指定管理者(略)の選定に当たっては、予算の適正な執行並びに透明かつ公正な選定手続及び当該公の施設の効果的な管理を確保しつつ、中小企業者の参入機会の増大に努めなければならない。

 公の施設の管理を民間団体へ委託する指定管理者制度も、中小企業にとっては貴重な受注機会のひとつです。ここでは、「入札による契約」ではなく「指定」によって委託するという委託方法は違っていても、「指定管理者制度も委託契約の一類型であり、執行機関へ中小企業への優先発注を促す対象である」ことについての理解が必要となっています。
 条例のテーマに直接関係することだけではなく、自治体行政における様々な制度に理解を持ち、思いをめぐらせながら条例を創る必要があります。



指定管理者制度において「指定」によって委託する意味
 契約で委託した場合は、受託者が契約違反をしても、受託者が解除に応じなければ、民間における契約上のトラブルがそうであるように、裁判によらなければ委託契約を解除することはできません。契約においては、当事者は対等ですから、どちらかが一方的に解除することはできないのです。
 指定管理者制度は、使用許可の権限を含めて公の施設の管理のすべてを委託する制度です。指定管理者が不適当な管理を行えば、住民の公の施設の利用が直接阻害されます。よって、解除に合意や裁判手続が必要な契約という方法によって委託することは、リスクが大きいと考えられます。
 そこで、指定という行政処分で委託することによって、契約違反があれば、一方的に「指定取消し」によって委託関係を解消できる仕組みをとっているのです。
 言い換えれば、指定によって委託しているだけであり、指定管理者制度もあくまで自治体事務における委託の一方式であることに変わりはありません。ですから、自治体における委託のあり方を検討する際には、当然、指定管理者制度の対象となる(なっている)事務事業も含めて検討しなければならないのです。

② 議員立法同士で連携できる
 議員立法同士で連携することができます。北九州市中小企業振興条例11条は、前述の「北九州市商店街の活性化に関する条例」を引用しています。議員立法同士を重ねることによって、単発ではなく総合的に議会の意思や政策を自治体に反映させることができます。また、議会においても自分たちが発案して制定された条例を検証し、「議員立法による体系づくり」も可能となります。

 (地域商業の活性化)
第11条 市は、商店街(北九州市商店街の活性化に関する条例(略)第2条第1号に規定する商店街をいう。)の活性化を図るための必要な施策を講ずるに当たっては、その施策が中小企業の支援に資するものとなるよう努めるものとする。

 自治体の例規集は行政分野ごとに分かれていますが、それとは別に、将来的には、「議員立法」という分野横断的な「章(のようなもの)」を設ける自治体も現れるかもしれませんね。

この記事の著者

議員 NAVI

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る