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条例REPORT

2017.03.27 議会改革

議会で条例を創る ~北九州市議会における議会提案条例を例に~(上)

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2 条例の創り方(条例創りのポイント)

 北九州市の議員提案で成立した条例をご紹介しながら、条例を制定するための具体的なポイントをお示しします。重ねて、私見であることをお断りしておきます。

(1)北九州市商店街の活性化に関する条例
① 法的に「できないこと」を理解する

 商店会(組合)へ加入する商店主が著しく減少し、アーケードの維持などが困難になっています。そこで、商店組合への加入を促す条例を制定することが考えられます。一般論としては、条例は住民(ここでは商店主)の義務を決定することができるからです(自治法14条2項)。
 しかし、これは同じように加入率の低下が問題となっている自治会・町内会にも共通することですが、条例で(法律であっても)特定の団体への加入を義務付けることはできません。どのような団体に所属するか、あるいは、しないかを自分で決める権利は、基本的人権のひとつであり、憲法上、当然に保障されていると考えられるからです(憲法13条、21条1項)。
 条例創りに取り組む際には、法律や条例の具体的な規定だけではなく、基本的人権(憲法的価値)の内容や意味を十分に理解した上でなければ、「法律には違反していないが、法律の前提に違反している条例」を創ってしまうことになりかねません。
 法律や条例は、制度的な側面が強いので、個別具体の規定を知識として収集することが理解の中心となりますが、憲法(的価値)の場合は、多分に「常識」ですから、その価値を共有することが必要となります。
 憲法の規定はやや抽象的で、論理としては、法律のようには明確に内容が把握できません。しかし、憲法は、人が当然保障されるべき権利や果たすべき義務が確認的に規定されているので、その内容自体は、政策的な白黒を多数決的に決定していることが多い法律や条例よりも、誰もが納得できるものばかりです。法律は「頭」で理解し、憲法は「心」で理解するイメージを持っていただければよいと思います。心は頭に優先するのです。
 少し言い過ぎになるかもしれませんが、法律については具体的な勉強をしていないと法律違反の条例を創ってしまうことになりかねませんが、憲法の勉強をしていなくても、人権感覚、つまり「一人ひとりの住民を大切にする」という感覚を持っていれば憲法違反の条例を創ってしまうことにはならないと考えます。
 いずれにしろ、「加入の義務付けが必要であるが、憲法○○条に触れるのでできない。残念だ。やむを得ない。諦めよう」ではなく、「必要性はあるが、加入を義務付けるのは正しいことではない。そこまですると、結局、住民やまちづくりや社会全体のためにはならない」という見識(人権感覚)が条例創りには欠かせません。
 住民の土地の利用は制限できても、団体に所属するかしないかを自分で決める自由の制限はできないのだということは、具体的にはどこにも書いてはいませんが、「感覚」で、つまりは「心」で理解すべきことなのです。私は、「条例創りに最も大切な要素は何ですか」と研修で尋ねられたら、「一人ひとりの住民を大切にすること(人権感覚)です」と答えます。
 そこで、「加入しなければならない」ではなく、「なるべく加入してください」という規定を設けることで、勧誘する側の商店組合の後ろ盾をつくろうというのが、「北九州市商店街の活性化に関する条例」のコンセプトです。義務でなくても、「条例で加入促進が規定されているので、加入してください」と言えることの意義は、加入率の低下に悩む商店組合にとってとても大きいのです。

○北九州市商店街の活性化に関する条例
 (事業者の責務)
第5条 事業者は、商店会への加入、後継者の育成並びに創意工夫及び自助努力による経営基盤の強化に努めるものとする。
2 事業者は、光熱水費、アーケードの維持管理の費用その他の商店街を維持管理するための費用を応分に負担するよう努めなければならない。
3 事業者は、商店街の活性化のための事業に対し応分の費用を負担し、及びその事業に協力するよう努めるものとする

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