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特集 地方創生

2017.02.27 まちづくり・地域づくり

地方創生、その先へ ~地域の未来、農山漁村の未来を考える~

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 しかしながら、こうした枠組みは、過去のものとなりつつある。
 第1に、人工知能や情報通信産業の進展により、社会経済のソフト化、自動化が一層進行することが指摘されている。Google創業者のラリー・ペイジ氏は、「人工知能の急激な発達によって現在日常で行われている仕事がロボットに代行されることになり、近い将来には10人中9人は今とは違う仕事をしているだろう」と述べる。仕事や働き方に変化が起こり始めている状況のもとで、高度な技能や資格を持ち、高額所得を得ている一部の人々はさておき、定式化された仕事をこなしながら限られた所得しか得ることのできない人々にとって、大都市で暮らしの安定や、仕事を通じた生きがいを得ることは難しくなりつつある。
 第2に、1990年代前半のバブル崩壊以後、大手の金融機関や証券会社の破綻や再生が起こり、2000年代に入ると、今度は世界に名をはせた家電等のメーカーが競争力を失っていく。グローバル化の中で、資本が世界中を移動する時代にあって、いわゆる大企業への就職が、安定した将来を保障するものではなくなっている。また、日本の優れた技術があっても、それを応用する場面を見いだすことができなければ、宝の持ち腐れとなる可能性もある。現代社会においてサービス経済化が進む中で、モノづくりの技術だけで付加価値が生まれる時代ではなくなっている。むしろ、特許や知識、デザイン、あるいは一流のおもてなしなどが、高付加価値を生む時代となった。
 さらに、サービス経済化とIT化の進展により、どこの地域にいても、パソコン数台で多くの利益を上げることが可能な時代となった。モノづくりの技術で高付加価値を生み出していた時代であれば、消費地に近いところで商品企画を立案し、地代と人件費が安く、輸送コストの相対的に低い地域に工場を立地することで、低コスト生産を行うことができた。だが、今の時代は、大量生産・大量消費の時代ではなくなっている。むしろ、限られた資源を有効に活用しながら、個々人の希望に即したカスタムメイドの商品をつくり、小ロットで販売していくことが成立する時代となっている。その結果、IT企業などが農山村にサテライトオフィスを立地する等の動きも生じるようになっている。
 他方で、農村での働き方も変わりつつある。農業といえば、土地を持った農家が農産物の生産を行い、販売は農協に委ねるという方法が一般的であった。しかしながら、農業部門においても自由化が進むとともに、高付加価値型の農産物を、特定の顧客に販売するという多様な生産の形が見られるようになっている。6次産業化も進む中で、生産した農産物を加工したり、レストランや宿泊施設で提供するなど、多角的な展開を図る動きも生じている。地域特性を生かした農産物の生産にとどまらず、その高付加価値化を目指して販路開拓や営業、パッケージデザインなどを工夫し、経営展開を図る取組みが各地で展開されている。さらに、「半農半X」という働き方により、多業で暮らしを維持するスタイルも見られる。
 その結果、例えば高付加価値型の多角的な経営で、高所得を稼ぐ農家も各地で誕生しており、都会でサラリーマンとして働くよりも、田舎で農業を軸とした多角的な事業を展開する方がクリエイティブであり、より多くの収入が得られるという時代が到来しつつある。
 図は、2002・03年と2012・13年の1人当たり雇用者報酬と1人当たり県民所得の平均値の伸び率を示したものである。図から、この10年の間に東京や大阪などでは雇用者報酬も所得も減少していることが分かる。他方で、1人当たり雇用者報酬が伸びているのは徳島県であり、また1人当たり県民所得が増えているのは東北や北関東のほか、山梨、愛知、三重、京都、和歌山、広島、山口、香川、そして九州の数県である。東北や北関東については、東日本大震災後の復旧・復興事業の影響が大きいと考えられるが、その要素を除いたとしても、決して、三大都市圏で所得が増大しているというわけではないことが見て取れる。

図 都道府県別に見た1人当たり雇用者報酬と1人当たり県民所得の増減率(2002・03年⇒2012・13年)図 都道府県別に見た1人当たり雇用者報酬と1人当たり県民所得の増減率(2002・03年⇒2012・13年)

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