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2016.09.12 政策研究

前進するNPO活動!!~NPO活動の一層の健全な発展を図るとともに、NPO法人の運営の透明性を確保するためのNPO法改正~

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Ⅳ 改正法を受け所轄庁において想定される業務上の対応等

 ここでは、Ⅲの改正法の内容に沿って、改正法を受けて所轄庁において想定される業務上の対応等について検討します。

1 認証申請の添付書類の縦覧期間の短縮等
 Ⅲの1の(1)で述べたように、縦覧期間の2月間から1月間への短縮により、トータルの認証審査期間は、3月間となります。所轄庁におかれましては、期間短縮に対応できるよう、改正法の内容を踏まえての認証審査業務の確認や当該業務の見直しをお願いいたします。
 認証審査業務の見直しに当たっては、認証申請情報の周知方法について、現行の公告を維持するか、改正法により措置されたインターネットの利用による公表へと移行するかを、それぞれの所轄庁における公報発行の頻度を踏まえてお決めいただく必要があろうかと思います。
 また、今回の改正を機に、国家戦略特別区域法のNPO法特例を利用することも選択肢のひとつかと思います。改正法により、NPO法上の縦覧期間は2月間となるのに対し、国家戦略特別区域法のNPO法特例では2週間となります。認証件数が少なく事務量に余裕のある所轄庁におかれましては、同特例の利用につき検討の余地があるものと思います。

2 貸借対照表の公告及びその方法
 Ⅲの1の(2)で述べたように、2号施行日以後、貸借対照表の公告が義務付けられることに伴い、NPO法人は資産の総額を登記する必要がなくなります。この点は、NPO法人の監督に当たられる所轄庁におかれましても、十分にご留意いただければと思います。
 もっとも、2号施行日から改正法に基づき貸借対照表が公告されるまでの間の措置として、NPO法人は、2号施行日前に作成された直近の事業年度に係る貸借対照表を、遅くとも2号施行日までに公告している必要があります。そこで、所轄庁におかれましては、NPO法人に対し、2号施行日前に、改正法が定める4つの方法のうちから各法人の規模、活動形態等に鑑みて、最も適した貸借対照表の公告の方法を定款に規定しておくよう周知していただければと思います。
 なお、貸借対照表の公告の方法として電子公告を選択するNPO法人に対しては、電子公告を行うことができない場合に備えて、官報又は日刊新聞紙のいずれかの方法をあらかじめ定款で定めておくよう指導いただきますことをお願いいたします。

3 事業報告書等及び役員報酬規程等の備置期間の延長等
 Ⅲの1の(3)で述べた事業報告書等の備置期間の延長等とⅢの2の(2)で述べた役員報酬規程等の備置期間の延長等に関し、所轄庁において想定される業務上の対応等については共通する部分が多いと考えられるため、両者をまとめて検討します。
 これらはいずれもFATF勧告に対応して、法人事務所における備置期間を5年に延長するものですが、これに併せて、所轄庁における公開期間も5年に延長されます。そのため、所轄庁におかれましては、備置期間の延長を踏まえてNPO法人等の監督に当たっていただくとともに、公開期間の延長への事務的な対応をお願いいたします。
 また、所轄庁における公開は条例で定めるところにより行われているため、改正法を受けて、所轄庁によってはNPO法施行条例の改正が必要になるところも出てくるかと思います。平成29年4月1日の施行までに余裕をもって条例改正をしていただきますようお願いいたします。
 なお、所轄庁によっては、行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律に基づいてインターネットでの閲覧を実施している場合があると思います。この場合は、公開期間の延長に備えてシステム上の対応が必要になることもあると思われます。

4 海外への送金等に関する書類の事前提出義務に係る規定の見直し
 Ⅲの2の(1)で述べたように、200万円超の海外送金等に関する書類について、そのつどの事前提出を定めた旧54条4項が削除され、送金等の額の多寡を問わず54条2項3号に掲げる書類として毎事業年度1回の事後提出に一本化されます。
 もっとも、施行日である平成29年4月1日の属する認定NPO法人等の事業年度中における200万円超の海外送金等については、引き続き現行法と同様の事前提出規制が及ぶことになりますのでご留意ください。
 また、改正法により旧54条4項の規定が削除されることに伴い、所轄庁によっては、同規定を引用しているNPO法施行条例の改正が必要になろうかと思います。平成29年4月1日の施行までに余裕をもって条例改正をしていただきますようお願いいたします。

5 仮認定NPO法人の名称の変更
 Ⅲの2の(3)で述べたように、仮認定NPO法人の名称が特例認定NPO法人に変わります。これは、名称のみの形式的な変更で、特例認定の基準等の実質的な変更を伴うわけではありません。
 もっとも、NPO法上の「仮認定」や「仮認定特定非営利活動法人」といった用語を引用している条例が、NPO法施行条例や地方税条例をはじめ相当数に上ると考えられ、これらの条例の改正が必要になります。3や4で述べた事項の改正と併せて、平成29年4月1日の施行までに余裕をもって条例改正をしていただきますようお願いいたします。


(1) 都道府県知事又は政令指定都市長(9条)。
(2) 改正法の条文は、衆議院法制局のホームページ等を参照のこと。
(3) 資産の総額とは、積極財産から消極財産を差し引いた法人の正味の財産のことをいいます(昭和39年2月26日第4発72号民事局第4課長回答)。
(4) Ⅲの1の(3)参照。
(5) 組合等登記令の改正により、資産の総額の登記は、2号施行日において、職権により一括して抹消されます。
(6) FATF(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)とは、1989年のG7アルシュ・サミット経済宣言を受け、マネロン・テロ資金対策の国際基準づくりを行うための多国間の枠組みとして設立されました(日本は設立当初からの加盟国)。FATFによるマネロン・テロ資金対策の国際基準(FATF勧告)は、世界190以上の国・地域に適用されています。また、FATFは、勧告の履行状況について、加盟国間で相互審査を行い、その際に特定された不備事項の改善状況について、フォローアップを行っています(前回審査は2008年)。
(7) 第4次勧告の履行状況に関する審査は、2019年開始予定です。
(8) 送金等額の多寡を問わず、54条2項3号の内閣府令で定める事項を記載した書類として事後提出をすることになります。
(9) Ⅲの1の(3)参照。
(10) 後述の名称改正により「特例認定」となります(Ⅲの2の(3)参照)。
(11) PSTとは、広く市民からの支援を受けているかどうかを判断する基準のことをいいます。

■参考文献
◇特定非営利活動法人制度研究会編『解説 特定非営利活動法人制度』商事法務(2013年)
◇落合誠一編『会社法コンメンタール21―雑則(3)・罰則』商事法務(2011年)
◇始関正光編著『Q&A平成16年改正会社法 電子公告・株券不発行制度』商事法務(2005年)

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