(2)役員報酬規程等の備置期間の延長等(54条2項及び3項並びに56条)
① 趣旨
54条2項及び3項の改正はいずれも前述のFATF勧告(9)に対応して、認定NPO法人事務所における役員報酬規程等の備置期間を延長するものであり、56条の改正は認定NPO法人事務所における備置期間の延長に併せて、役員報酬規程等の所轄庁における公開期間を現行の3年間から5年間に延長するものです。
② 認定NPO法人事務所における備置期間の延長(54条2項)
現行法は、認定NPO法人に対して、NPO法人一般に対して備置きが義務付けられている事業報告書等に加えて、様々な書類の備置きを義務付けています(本項各号)。これは、認定NPO法人がNPO法人以上に税制優遇を受ける立場にあることに鑑み、より一層の法人の活動に関する情報公開を図る趣旨で設けられた規制です。
そこで、このような現行の認定NPO法人の備置書類に関する枠組みを今般のFATF勧告への対応に際しても維持することとし、認定NPO法人のみに備置義務がかかっている役員報酬規程等についても、その備置期間を現行の「翌々事業年度の末日までの間」から「その作成の日から起算して5年が経過した日を含む事業年度の末日までの間」へと延長しています。
③ 助成の実績を記載した書類の備置期間の延長(54条3項)
認定NPO法人が助成金の支給を行ったときに作成する本項の「助成の実績を記載した書類」も、FATF勧告にいう「国内・国際取引に関する記録」に該当します。
そこで、その備置期間を現行の「その作成の日から起算して3年が経過した日を含む事業年度の末日までの間」から「その作成の日から起算して5年が経過した日を含む事業年度の末日までの間」へと延長することとしています。
④ 所轄庁における公開期間の延長(56条)
現行の56条では、所轄庁に対し、認定NPO法人から過去3年間に提出を受けた役員報酬規程等の閲覧・謄写に応じる旨を義務付けていますが、これは認定NPO法人事務所における役員報酬規程等の実質3年の備置期間(改正前の54条2項及び3項)と平仄を合わせたものと考えられます。
そこで、今般の改正に当たっても、認定NPO法人事務所における役員報酬規程等の備置期間の延長に併せて、所轄庁における公開期間を過去3年間から過去5年間へと延長しています。
⑤ 施行日及び経過措置(附則1条柱書、6条及び7条)
54条2項及び3項並びに56条の改正規定の施行日は、平成29年4月1日を予定しています。なお、改正後54条2項及び56条の規定は同日以後に開始する認定NPO法人の事業年度に係る役員報酬規程等から適用され、改正後の54条3項及び56条の規定は同日以後に行われる助成金の支給に関する書類から適用されることとなります。
⑥ 特例認定特定非営利活動法人とFATF勧告(62条)
現行法では、仮認定(10)特定非営利活動法人(以下「仮認定NPO法人」という)の役員報酬規程等に係る規制は認定NPO法人に準じていますが、この仮認定制度と「国内・国際取引に関する記録の最低5年間の保存」を義務付けるFATF勧告との関係については、同制度が有効期間3年で1回限りの特殊な形態であることに鑑み、認定NPO法人並みにFATF勧告へ対応するのではなく、現行と同様の備置期間を維持することとしています。
(3)仮認定NPO法人の名称の変更(2条4項及び3章)
① 趣旨
仮認定制度は、NPO法人の設立初期の活動を支援するため、設立5年以内のNPO法人がPST(パブリック・サポート・テスト)(11)要件以外の認定要件を満たす場合に、1回限りで、3年の有効期間内に一定の税制優遇を受けることのできるスタートアップ支援の制度です。
しかし、この「仮認定」という表現は、その状態が通常でないような印象を与え、仮認定NPO法人が寄附募集の場面においてNPO法人よりも不利に扱われることもあるとの指摘がなされていました。このような誤解に基づく事態は、スタートアップ支援という仮認定制度の趣旨にそぐわないものといえます。
そこで、このような誤解を防ぎつつ、設立初期のNPO法人に対する1回限り・期間限定のスタートアップ支援という仮認定制度の趣旨を維持する表現として、「仮認定」を「特例認定」に改めています。
② 施行日及び経過措置(附則1条柱書、5条、9条及び10条)
名称変更に関する規定の施行日は、平成29年4月1日を予定しています。なお、同日においてすでに旧仮認定を受けているNPO法人は特例認定を受けたNPO法人とみなされ、その有効期間は旧仮認定の有効期間の残存期間となります。また、同日前にされた旧仮認定の申請は、特例認定の申請とみなされ、従前どおりの基準により特例認定が行われることとなります。