③ 貸借対照表の要旨(2項)
前項では、貸借対照表の全文を公告することを原則としていますが、官報や日刊新聞紙で公告を行う場合に必ず全文の掲載を要するものとすると、多くの紙面が必要となり、公告料金が非常に高額になってしまいます。
そこで、貸借対照表の公告の方法として、官報又は日刊新聞紙を選択したNPO法人については、貸借対照表の全文ではなく、その要旨を公告すれば足りることとしています。
④ 電子公告ができない場合の公告方法(3項)
電子公告を選択したものの、地震等によってサーバ等の公告設備に早期に回復することが不可能な損傷が生じた場合、定款変更をしない限り、公告をする手段がなくなってしまいます。このような場合、NPO法人側に定款変更のための臨時社員総会を招集する暇がないことも考えられます。
そこで、このような事態に対処するため、電子公告を行うことができない事故その他やむを得ない事由が生じた場合には、官報又は日刊新聞紙のうちいずれかの方法をあらかじめ定款に定めておき、当該方法によって公告することができることとしています。
⑤ 電子公告期間(4項)
官報や日刊新聞紙が公告方法である場合には、公告が掲載された号が発行されれば公告義務が履行されたことになりますが、電子公告の場合には、ウェブサイト上に公告事項が掲載されている状態を作出し、この状態を継続することが必要となります。
そこで、後述のNPO法人事務所における事業報告書等の備置期間の延長(4)に併せて、貸借対照表の電子公告は「前条〔注:28条〕第1項の規定による前事業年度の貸借対照表の作成の日から起算して5年が経過した日を含む事業年度の末日までの間、継続して」行わなければならないものとしています。
⑥ 公告の中断及びその救済(5項)
電子公告は、公告すべき内容を前項の期間中継続してウェブサイトに掲載するものであり、サーバのダウンやハッカーによる改ざんなどによって公告すべき内容がウェブサイトに掲載されなかった期間が生ずる「公告の中断」が起きた場合には、その公告は無効となるのが原則です。
しかし、公告の中断期間の公告期間全体に占める割合がわずかであり、そのことについてNPO法人に大きな落ち度がないような場合にまで、一律に公告を無効として公告のやり直しをさせることは、NPO法人にとって酷であり、また、関係者を混乱させることにもなります。
そこで、次の3つの要件のいずれをも満たす公告の中断については、公告の効力に影響を及ぼさないこととしています。
(イ)善意でかつ重過失がないこと又は正当な事由があること
重過失がある場合としては、例えば、最低限必要とされているサーバのメンテナンスを全く怠っていたためにサーバがダウンして公告の中断が生じた場合などが考えられます。また、正当な事由がある場合とは、例えば、公告設備の定期的なメンテナンスのためにサーバを一時的に停止する場合などが該当します。
(ロ)公告の中断期間が公告期間の10分の1以下であること
10分の1以下としたのは、公告すべき内容が公告期間の9割以上の期間掲載されていれば、閲覧者がアクセスをしてもその内容を閲覧することができない可能性はかなり低いので閲覧者に大きな不利益を及ぼすことはなく、他方で、NPO法人にとっても、公告期間の1割の期間があれば、サーバのメンテナンスや事故に対応するための時間として十分と考えられるためです。
(ハ)追加公告
追加公告とは、NPO法人が公告の中断が生じたことを知った後速やかに、中断が生じたこと、中断が生じた時間及び中断の内容を、元の掲載内容である公告と同じウェブサイトに掲載することをいいます。
⑦ 施行日及び経過措置(附則1条2号及び4条)
28条の2の規定は、公布の日(平成28年6月7日)から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日(遅くとも平成30年10月1日予定。以下「2号施行日」という)から施行されますが、2号施行日以後に作成する貸借対照表から適用することとされています。
なお、資産の総額の登記が抹消される2号施行日(5)から改正法に基づき貸借対照表が公告されるまでの間の措置として、2号施行日前に作成された直近の事業年度に係る貸借対照表については、遅くとも2号施行日までに公告が行われている必要があります。