4 地域創生の事例研究
(1)「五感六育」事業構想の提言と新たな自治体職員の動き
2016年5月、「全国自治体職員の集い 拡大フォーラム in 大分(日田市)」は、全国47都道府県にいる167名の世話人と連携し、全国自治体政策研究交流会、自治体学会日田大会プレイベントと日程を合わせて開催した。
「全国自治体職員の集い」とは、県・市町村にある自主勉強会を個別での開催から一緒に行い、地域課題を情報共有し、構想・実現を目指すもので、目的は至ってシンプルである。各種大会も協働で開催するなど、部分・個別最適を全体最適化することが重要となる。今回の拡大フォーラムのタイトルは「進撃の地域!」、全体テーマは「地方創生を実現するまちのあり方、自治体職員のあり方とは?」。ここで私は基調講演「地域創生の動向―人財養成の視点から―」の講師と事例中心のパネルディスカッション「私たちの使命と志命」のコメンテーター・総括役であった。地ものに強い関心を持つ私は、打合せ後の昼食に用意された「きこりめし」に感動した。弁当の中の丸太ごぼうを日田杉でつくられた小さなノコギリで切って食べる、林業再生を推進するまちのアピールが実にいい。林野庁によると、1980年には全国に約15万人いた林業従事者は、2010年には約5万人に減少。今、森を見よう! 大切な森林を守る人財養成と定着がますます重要となっている。
開催地の日田市であるが、古くから市周囲の山間部での林業が栄え、この地で育つ杉は日田杉と呼ばれ、日田杉を用いた下駄(げた)づくりや漆器などの木工業が盛んであった。日田林業の歴史は古く、江戸時代に植林を開始し、戦後は森林整備や原木市場の開設などで製材工場が増加し、全国でも有数の林業地となった。家具、クラフト、下駄などの木材加工も盛んに行われた。近年は外国産の安い木材の輸入増加などの影響で、林業が厳しい環境にあるが、2014年度に林業、木材産業の振興を図るための指針「新しい日田の森林・林業・木材産業振興ビジョン」を策定し、乾燥材の生産拠点の整備などを実施している。今後は、基幹産業の強化として、五感による日田杉の分析、六育(知育・食育・木育・遊育・健育・職育)から生活者視点の利活用をはじめ、世界に発信でき得る地場産業のブランド化、減少が続いている林業従事者の養成と定着にチカラを入れる必要がある。また、地場産業をみるに、井上酒造、クンチョウ酒造、老松酒造などの酒造業、近年は工業製品等、ビール・ウイスキー等酒類や、食品工業の工場がある。地場産業の一層のクラスター形成が必要であり、部分・個別最適の準最適から全体最適化を図ること、特に、地場産業と連携する広聴、傾聴、対話による起業促進が重要となろう。
拡大フォーラム講演時、私は地域創生のポイントとして、①知り気づきの機会から自ら行動する自分たちでできるまちおこし、②自己分析・まち分析から真のパートナー・ブレーン探し、キーパーソンと人的ネットワーク形成、五感六育のモデル化、③情報共有、役割分担、出番創出、事業構想と事業構築の推進、④期限は(3+3+6+6)月×2回=3年間、⑤リーダー・プロデューサー人財の養成と定着の重要性を、事例を交え講話した。
平成28年熊本地震は、その後も余震が続いており、宿泊キャンセルなど地場産業の痛手となっている。このような中、何とか被災地に元気を取り戻したいとの思いから、大分県での開催を決断したものである。開催当日の日田市の最高気温は31.5度と、この日全国一の暑さを記録。この暑さを吹き飛ばすような全国自治体から駆けつけた仲間の熱気あるフォーラムとなった。この状況の中、参加者数は約300名、自治体職員のほか、首長・議員、民間企業や自営、NPO、大学生など異業種の集まりであった。次回8月27日(土)~28日(日)の真夏に開催される別府市の「全国自治体職員の集い第1回全国大会」に向け、良い気運づくりとなった。参加者の拡大フォーラム満足度のアンケート結果は、満足が43%であった。
5月14日(土)の日田市での拡大フォーラム後の全国自治体職員の集い全国大会・拡大フォーラム日程であるが、5月27日(金)山口県宇部市、5月29日(日)北海道夕張郡由仁町☆プレ大会、6月11日(土)宮城県仙台市、6月12日(日)新潟県長岡市、6月24日(金)佐賀県小城市、6月25日(土)東京都多摩地域 羽村市、7月2日(土)奈良県吉野町、7月3日(日)愛知県豊川市、7月9日(土)福島県郡山市、7月23日(土) 福岡県北九州市、7月24日(日)高知県高知市、8月22日(月)島根県松江市、8月27日(土)〜28日(日)大分県別府市第1回全国大会、10月8日(土)群馬県渋川市にて開催となっている。別府市にて、8月27日~28日に全国自治体職員の集い第1回全国大会を開催するが、若手経営者が中心の新たな学術学会(初年1,000人規模)第1回研究大会も、本年8月27日~28日、別府市開催予定で準備中である。大会準備から長野別府市長はじめ、大分県など九州の自治体に協力・応援いただいている。全国大会は、2017年の群馬県渋川市、2018年の東京都多摩地域、2019年の宮城県、そして2020年10月開催予定の全国自治体職員の集い第5回全国大会・東京大会に向けて、全国自治体職員の輪を広げている。