3 条例の制定経緯及び概要
新潟県の場合、前述したとおり、本会議あるいは委員会審議の場で、複数の県議会議員が鳥獣被害対策に関する質問を行い、執行部に迅速な対応を求めることにより、副知事を本部長とする鳥獣被害対策本部の設置に大きく寄与したところである。一方、地方自治法では首長及び議員(含む委員会)双方とも条例の提案権を有している(13)ことを踏まえ、新潟県議会自由民主党議員団は、平成26年度に入ってから鳥獣条例制定のためのプロジェクトチームを立ち上げ、党会派として鳥獣条例制定を視野に入れた活動を本格化させていた。その活動を報じた地方紙等によれば、同党プロジェクトチームは、県内大学にて鳥獣被害対策を研究している者を招いての実態把握や、他県に赴き鳥獣被害対策についてヒアリングなどを行っている(14)。そのほかにも、鳥獣被害を有する県内の市町村に足を運び、現場の声を聴取するなどして、平成26年10月に条例案をまとめた同党県議団は、党県支部連合会ホームページ等を用いて、当該条例案に対するパブリックコメント(15)を行うとともに、県内市町村や関係団体への意見照会等も併せて実施した。そこから得た意見等を踏まえた条例案の見直し(16)を経て、平成26年12月定例会の初日(12月2日)に鳥獣条例の提案を行った。鳥獣条例は、委員会審議を経て、最終日の12月18日に全会一致をもって可決・成立している。
次に、鳥獣条例の枠組みについてであるが、「前文」、「目的」、「定義」、「基本理念」、「責務・連携・役割」、「施策推進方策」で構成されている(全12条)。責務・連携・役割は、それぞれ県、市町村、特定野生鳥獣関係団体に対応し、施策推進方策には、財政上の措置、推進施策の明示、連携協力体制の整備、施策状況の公表、顕彰(表彰)が盛り込まれている。なお、「附則」には、施行期日のほか、条例施行後3年を経過した場合において、当該条例の施行状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする、いわゆる「見直し規定」が具備されている。また、鳥獣条例の立案趣旨としては、人と野生鳥獣の真に共生する地域づくりを推進するため、県民に人的・物的被害を与え、生態系のパワーバランスをも崩しかねない有害鳥獣、すなわち特定野生鳥獣については、生息地の縮小を図り、それでも改善されない場合には、生息数(個体数)の減少を図ることにより、良好な自然環境、生活環境の確保を目指すことを掲げている。さらに、立案者としては、有害鳥獣をマイナスの財産のみとは捉えず、捕獲した特定野生鳥獣に、新たな付加価値を加え、地域の特産へと昇華させること等により、有害鳥獣をプラスの財産に変貌させ、地域の活力の向上につなげることも条例制定の大きな意義と解しており、「管理+有効活用」の視点に重きを置いた政策展開が重要であるとしている。