◉実施機関及び委託先について[回答は自治体]
委託での実施が約7割。自治体の直営が2割。委託先としては、NPO法人など民間団体が中心で、行政と市民の協働が進み、地域づくりにもつながっている状況が見えるが、地方では社会福祉協議会など、都市部では教育産業などの営利法人も。
学習支援の実施機関は、委託が67%で、委託先としては、NPO法人等が約40%、社会福祉協議会が14%と、民間団体に委託されている傾向がはっきりと分かりました。都市部では、多くはNPOなど民間の団体に、一部には、教育産業に委託するケースもあります。地方では、民間のNPOや個人など委託する主体がないところで、自治体が直営をするケース、教育委員会が退職教員(校長)などに委託するケースもありました。全国的には、子どもの貧困対策の中心的な事業として、民間団体や個人と行政の連携が進んでいることが分かります。今後の地域づくりを目指し、民間団体と自治体との協働事業が注目されますが、自治体には子どもや若者を支援できる団体や人材を育てるという発想も必要でしょう。
◉学習支援事業を実施しない理由について[回答は自治体]
実施しない最大の理由として「地域に実施できる団体や人がいない」が6割強。費用(予算、財源)も課題。
学習支援を実施していない(予定も含む)自治体がまだ半数近くありますが、大きな理由は事業を引き受けてくれる団体や個人がいないという資源の問題です。全国的に、「子どもの貧困がない」ところはないのですが、自治体だけではできないのであきらめてしまうケースが少なくないようです。また、住民から要求がないところでは、自治体の首長や職員もその気にならないという実態も少なくないようです。地域で子どもの貧困を可視化する行政や地域住民の努力も必要に思われます。
続いて、「実施するための財源が確保できないから」が45.5%となりました。これらの回答から、地域社会で、子どもの教育に関わる人材、団体の育成が大きな課題であること、また地域社会や行政がどのように子どもや保護者に学習支援を行うか、十分なコンセンサスができていないことも明らかになりました。
◉対象世帯について[回答は自治体]
学習支援の対象は、実施自治体の約7割が「生活保護受給世帯」。その他に、地域によって、就学援助世帯、児童扶養手当世帯など、対象の幅が異なる。
学習支援の実施自治体に、対象世帯について尋ねたところ、「生活保護受給世帯」が68.1%、続いて、「就学援助制度利用世帯」(22.7%)、「児童扶養手当受給世帯」(13.9%)となりました。生困法の支援対象は、自治体ごとに、地域の実情やそれまでの経過などを踏まえた枠組みづくりが可能になっています。生活保護は福祉、就学援助は教育と担当部局が異なり、自治体の歴史や実態から自治体ごとの制度設計が可能になっています。
また、上記世帯のほとんどが、ひとり親世帯(特に母子世帯)、しかも「生活保護受給世帯」の親の約半数が中卒、または高校中退という調査もあります。学歴の低い親のためには、家庭で行われるはずの親との進路や教育費などの多面的な相談の場も必要になってくると考えます。