議員サイドから学校に出向く
実際に、新たに有権者となる若者が市議会を身近に感じ、市政や地方自治に関心を持ってもらうための取り組みとして、長野県松本市議会や岐阜県可児市議会では、議員が高校に出向き、意見交換を行っている。
高校生からは「議員さんが普段から足で稼いで市民の声を集め、市民の代表として市政を良くしていこうと活動してくれていることがよく分かった」「意見や要望などを自分たちで実際に声を上げていくことが、自分たちの街を良くしていくのにつながることに気づけた」(以上、松本市)、「幅広い分野において、知識や経験豊富な多くの大人と関わりを持つことで、知見を深め、将来の目標を明確に持つことができた」「地域の課題を身近に感じ、地元に愛着を持ち、将来は可児市のために役立ちたい」(以上、可児市)といった声が多く集まっている。
他にも、18歳選挙権を受けて、議員が学校に出向くことを検討している議会も出始めている。文科省が作成した副教材においても、「政治家を学校に招くこと」は問題ないとしている。もちろん、特定の政党・議員に偏らないような配慮は必要であるが、議員が学校に出向くことについて、文科省自らお墨付きを与えている。とはいえ、ただでさえ学校現場は議員が来ることを恐れており、学校現場が自ら議員を招くことはしにくい。だからこそこうした取り組みは、議員が教育委員会に求めるのではなく、議員自らが議会事務局と連携して、議員発の取り組みとして提案して行うことが大事である。国会議員であれば、それこそ超党派で連携し、「要請のあった学校に出向いて意見交換します!」と名乗り出てほしい。
子どもの社会参加促進が、街の未来を創る
「高校生の政治活動の届出制」を愛媛県教育委員会が導入する、というニュースが流れた。その一方で、「事実上の許可制になるおそれがある」「高校生自身が自分で判断すべきこと」といった観点から、届出制を導入しない大阪府、神奈川県、島根県などもある。
そもそも、放課後や土日休日の行動を学校が把握する必要性は何なのか。学校外の生活については、一義的に監督責任があるのは保護者であり、学校があれこれ把握=管理する必要性はない。政治活動の届出制という判断は18歳選挙権の趣旨を履き違えており、主権者を育てるどころか、子ども世代の政治離れをより加速する方向にしか働かない。
ただ、教育委員会や学校が、このような判断をとらざるを得ない状況にあるということも、理解できなくはない。それは、教員が放課後にゲームセンターや繁華街を見回ったり、生徒が万引きしたり、あるいは夜に公園などで騒いでいたりすると学校に連絡が入り、教師が謝罪する、ということが、いまもって存在しているからである。地域の方も、生徒の保護者に対してではなく、学校に対して「学校ではどんな教育をしているんだ!」とクレームを入れることがあるからだ。ある意味、学校が、生徒にとって生活の場であり、しつけの場であったりするからである。(「子どもの貧困」を背景に、「学校が子どもを救う最前線になっている」という現実もある)。
とはいえ、何でもかんでも学校任せにするのはおかしな話だ。もっと地域が子どもを受け入れ、地域の中で育てていく環境を整えることが大事であろう。
選ばれる側の「政治家」「政党」は、地元の担い手を育てていくための制度を創るとともに、自らが率先して、未来の有権者と語り合い、街の担い手を育てることに力を注いでほしい。
学校や教育委員会批判をするのは簡単だが、それだけで解決できるものではない。私たち一人ひとりの市民が、地域の一員として、きちんと子どもと向き合うことが、18歳選挙権時代のいまだからこそ、求められている。
明日の論点をチェック
□自治体への「子ども参加」への対応をチェック
□議員としての主権者教育への対応をチェック
□地域社会が子ども参加を受け入れる土壌があるのかをチェック