地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

明日の論点

2016.04.25 若者参画

18歳選挙元年の主権者教育。地方議会が担うべき役割とは

LINEで送る

主権者教育の必要性

 ところで、18歳選挙権ということは、高校3年生で18歳となり、高校を卒業した時点でほとんどが18歳=有権者になる。そのことから、高校における「政治教育」「主権者教育」の必要性がいわれている。
 しかし学校教育の現実は、「政治的中立性」を重視するあまり、生の政治を扱うことを避ける傾向が強い。また、授業時間数との関係もあり、議員の任期や定数、主要政党名、党首名などの単語・用語を覚えるといった、いわば知識偏重・暗記中心の授業となっているところが多い。
 そこで総務省・文部科学省は昨年、政治参加等のための学習教材(副教材)「私たちが拓く日本の未来 有権者として求められる力を身に付けるために」を約370万部作成し、2015年中にすべての高校生に配布した。副教材では、話し合い活動を中心に、実際の選挙を題材にした模擬選挙や模擬議会、請願など、実際の政治的事象を授業の中で取り上げ、社会課題について考え判断することを求めている。
 また、副教材とともに作成された「指導資料」においては、「政治的に対立している課題を取り上げること」「国会等で審議されている課題を取り上げること」「特定の政党に所属している首長や議員を招くこと」については、特定の考えや政党のみを取り上げるのでなければ“問題ない”としている。むしろ、これらをわざわざ“問題ない”と取り上げていることを考えると、積極的に“生の政治課題”を取り扱うことを、教育行政が推進しようとしている、ともいえる。
 18歳選挙権時代となるこれからは、多様な考えや意見を紹介することを通して多角的に物事をとらえ考えを深化させる機会を創出することが求められる。確かにこれらは「答えのない問い」であり、それを授業で扱うことについては、これまでそのような取り組みを行ってこなかった学校現場では戸惑いがあろうが、社会が複雑化・多様化・グローバル化し、少子高齢化が進む中、知識を覚えるだけで物事が解決できるわけではない。「お任せ民主主義」ではなく、「自分が引き受ける民主主義」に転換していくことが、日本社会のこれからの発展を考えると不可欠といえる。

模擬選挙は政治を自分事としてとらえる機会

 副教材で取り扱っている模擬選挙だが、その教育効果は高い。副教材においては、「架空の選挙を扱う模擬選挙」と、「実際の選挙を扱う模擬選挙」の2種類を取り上げている。筆者自身は、2002年の町田市長選挙以降、「実際の選挙を扱う模擬選挙」の普及・推進に取り組んでいる。また、実際の選挙を扱う模擬選挙は、“シティズンシップ教育”として、アメリカ、スウェーデン、フランス、ドイツなど各国で行われ、毎回数十万~数百万人の投票規模となっている。
 模擬選挙は、海外では「シティズンシップ教育」「主権者教育」としてポピュラーである。ドイツでは、ナチス独裁を許した悲惨な経験を踏まえ、政治をよく知り、政治に積極的に参加するための教育としての政治教育に力を入れており、その一つのプログラムとして模擬選挙が位置づけられている。また、スウェーデンでは、1960年代頃より民間団体の取り組みとして実施されていたものが、1990年代後半から国が関与するようになり、現在は、国家予算を投じて模擬選挙(スウェーデンでは「学校選挙(Skolval)」と呼ばれている)が実施されている。
 アメリカでも、4年に一度の大統領選挙では数百万人規模で模擬選挙(Mock Election)が行われており、世界各地で民主主義を子ども時代から体験し、学ぶことを通じて主権者を育てていこうとしている。
 〈模擬選挙を行う前〉と〈模擬選挙を行った後〉の中高生の「政治・選挙への関心」を比較すると、関心がある45.8%→76.4%、関心がない48.9%→17.2%となっている。実際の選挙を扱う「模擬選挙」を授業等で体験し、悩みながらも考え、自分の意思で1票を投じることで、政治や選挙について自分事としてとらえることができるようになる。模擬選挙は、架空の政党・候補者に投票するだけの単なる投票体験ではなく、実際の選挙を題材とするからこそ投票するために考える機会を生み出すところに価値がある。

副教材では、話し合い活動を中心に、実際の選挙を題材にした模擬選挙や模擬議会、請願など、実際の政治的事象を授業の中で取り上げ、社会課題について考え判断することを求めている。副教材では、話し合い活動を中心に、実際の選挙を題材にした模擬選挙や模擬議会、請願など、実際の政治的事象を授業の中で取り上げ、社会課題について考え判断することを求めている。

 突然、授業中に模擬選挙を行うのではなく、あらかじめ未来の有権者に対し模擬選挙を行うことを伝えると、「選挙カーがうるさい」「ポスターで街中の景観が汚くなる」というように、他人事として選挙を批判的にとらえていた未来の有権者が、「そういえばあの人、毎日駅前で話していたなぁ」「今度、チラシをもらってみようかな」というように、自分事としてとらえるようになる。
 そもそも私たちは、教科書や教則本を読むだけで、泳げたり自転車に乗れるようになるわけではない。練習をすることで型を学び、ルールを覚え、体得していく。上達するためには、練習が大事である。それこそ選挙は、私たちの代理人を決める場でもある。有権者となったから突然判断できるようになるわけでもない。子どもたちが、それこそ就学前から主権者として主体的に考え、判断し、他者との関わりの中で自分なりの答えを模索していく機会をあらゆる場面で保障していくことが不可欠である。

この記事の著者

議員 NAVI

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る