6 地方制度調査会のもう一歩
31次地制調答申を読んできた。法改正に至る提案は少ないこと、それにもかわらず改革の到達点を踏まえており活用できる分野も多いこと、とはいえ住民自治の視点から問題がある内容もあること、などである。
現行では、地制調は法律設置の首相の諮問機関という稀有(けう)なものである。とはいえ、それは地方自治制度にかかわる審議の唯一の場ではない。地方自治制度については、それ以外に地方分権推進委員会等や、個別テーマでもたとえば、(筆者は慎重派ではあるが)道州制については道州制ビジョン懇談会なども設置されている。また、「自治制度の枠内でやれることはもうあまりないのかもしれない」という消極的な評価があるのは(地制調委員、『日本経済新聞』2015年12月7日付)、地制調の対象領域を自治法に絞りはじめたからかもしれない。
まさに今日、31次地制調答申で提案されたテーマ、地方政治の活性化の議論、幅広い人材の確保、具体的には、議員の位置づけ、選挙制度、立候補を容易にするための労働法制・公務員法制との整合性等(それらの法改正を含む)に一歩踏み出すことを(自治法を超えること)、この答申は示唆している。地方行政重視の時代から地方政治の活性化の時代を踏まえながら考え実践していこう。
(6) 江藤俊昭編著『Q&A 地方議会改革の最前線』学陽書房、2015年、第2部第2章、参照。
(7) 「A市内に置く」ではなく、「A市何町何番地A市役所内」というようにすることが必要である(松本、前掲書、1230頁)。もちろん、ここから分室ができないということにならないが、まずもって集約の原則となることには留意していただきたい。
(8) 総務省自治行政局市町村体制整備課「地方自治法の改正に伴う行政機関等の共同設置に関する質疑応答集について」(北海道総合政策部地域行政局市町村課が総務省に問い合わせ、その結果を関係団体に送っている(2011年8月3日付))では、共同設置の考え方、モデル条例(議会事務局等)など、法改正の趣旨に沿ったものでわかりやすい。なお、「問3 改正により、どのようなものの共同設置が想定されるのか」という想定質問に対して、「まず、議会事務局の共同設置としては、……(中略)……議会事務局の法制担当課や法制担当職員等を共同設置することが想定される」と回答する案が示されている。議会事務局のモデル案は、議会事務局本体とそれを担う職員に関するものである。
(9) 今村都南雄「改正自治法(2011年)の間違った解説」『自治総研』2012年4月号。
(10) 江藤俊昭「『自治体議会学』のススメ」連載81~84回『ガバナンス』2015年12月号~2016年4月号、参照。
(11) 議会・議員の役割が高まる中、本当に夜間・休日議会で担えるかどうか、モデルを提示してもらいたい。たしかに、アメリカ合衆国の市町村では夜間議会が一般的であろう。しかし、自治体が担う役割はまったく異なっている。また、通年会期制でどうして多様な人材が議会に集まるのであろうか。その論理は不明である。
(12) 今村都南雄・辻山幸宣編著、地方自治総合研究所監修『逐条研究 地方自治法Ⅲ』敬文堂、2004年、976頁(原著『改正地方制度資料集15部』441頁想定問答集)。
(13) 今村・辻山、前掲編著、981頁(原著『改正地方制度資料集15部』96頁)。
(14) 1943年の地方制度改正に至るまで、監査機構には執行機関による自己監査と議決機関による監査があった。後者は「議決機関に監査権限を与えたものである」。その後、それが廃止されている。1943年改正において、市町村では「議決機関が有していた実地検査の権限が削除されて書面検査の権限を行使しうるにすぎなくなった」(府県では議決機関の監査は「全く行われる機会を失って」いった)。その後、第一次地方制度改革で、監査委員制度の設置にともない、都道府県議会も市町村議会と同様に、書面検査権限が付与されるとともに、監査請求権が付与された。今村・辻山、前掲編著、955頁以降、参照。
(15) 松本、前掲書、1226-1227頁。
(16) 2016年から備前市と瀬戸内市が監査委員事務局の共同設置を行うという。先行モデルとなると思われる。
(17) 指定都市・中核市・特例市以外の設置市97.6%(平均事務局職員数3.4人)、設置町村32.8%(0.6人)である(総務省資料2007年4月現在)。