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2016.04.25 議会改革

第31次地方制度調査会と住民自治(下)

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5 議会と監査委員制度改革

 監査委員制度の改革が提案されている。すでに指摘したように、監査の実施原則・手順の統一的な基準を自治体が共同して策定、統一監査基準の策定や研修の実施などを担う監査を全国的に支援する共同組織も必要という提案もあるが、ここでは議会・議員と密接に関連する議選の監査委員を選択制にすること、および監査委員事務局の共同設置が提案されているのを考慮して、監査委員そのものの共同設置についても考えることにする。

(1)議選の監査委員の選択制
 各自治体の判断で「監査委員は専門性のある識見監査委員に委ね、議選監査委員を置かないことを選択肢として設けるべき」というものである。29次地制調答申では、専門小委員会の議論では大きく議選監査委員の廃止に舵(かじ)が切られていた(答申では結局さまざまな議論のまとめとして今後の検討となっている)。選択制とすること自体、自治体の自治から考えて当然ともいえる。とはいえ、議選監査委員の廃止も可能となり、それを選択する自治体もあるかもしれない。その際、議選監査委員が制度化された意味を再確認しておく必要がある。
 もちろん、議選の監査委員への批判も考慮しておく必要がある。たとえば、「長とともに議会も監査委員の監査の対象となっており、監査委員は、長からだけでなく議会からも独立した存在とする必要があることから、議選委員を廃止し、議会は当該地方公共団体の行政全般にわたって幅広い見地から執行機関をチェックするという本来の機能を果たしていくべき」、「議員のうちから選任されるいわゆる議選委員については、短期で交代する例が多いことや、当該地方公共団体の内部にある者であり、その監査が形式的になりがち」といった批判である(29次地制調答申)。
 監査委員制度は、自治法制定以前の第一次地方制度改正において創設された制度である(市町村を含むすべての自治体に必置の機関とされたのは1962年)。その際、委員構成では、識見監査委員と議選監査委員の数を同数とすることとしている。
 その国会審議の際に、政府は次の説明理由を用意していた。「監査事務は、本来は会計や経理方面に関する専門的知識経験のみによって行い得るものであるが、監査が多くの場合行政の批判や非違の剔抉〔てっけつ〕となるから、議員のように羈束〔きそく〕されない独立の地位にある者を同時に伴っていなければ、目的に適合する徹底した監査を行い得ない虞〔おそれ〕があるからである。特に都道府県や大都市においては、地方長官部局長等に対する直接的にして具体的な行政の批判をするのであるから、学識経験ある者の中から監査委員の如く、一般吏員と同様の地位ある者のみの力では、なかなか実績を挙げることができない」(〔 〕内は引用者)(12)。いわば、「用心棒」のような役割が議選監査委員には必要になっている。そのためには、首長を支持する一般的には議会多数派の議員からではなく、少数派の議員から選出すべきであるという議論は首肯できる。
 なお、監査委員の定数の変更についての国会審議の際に政府委員は(1962年、市町村でも必置)、能率的な観点から識見監査委員は重要であるが、「議会選出の監査委員を一人も入れないということも、監査の実施の実情から考えますと適当ではございません」と「用心棒」としての役割は指摘されている(13)
 このように、首長に政治的に近い(一般的には多数派の)議員が選出され追認するのではなく、いわば少数派から選出されれば監査という手法によって強力な監視の役割が担えるというものである。議選の監査委員の意味を確認するとともに、その委員と議会の密接な関係を創り出すことが必要である。
 以上のことを考慮すれば、議選委員を有効に作動させる方途を考えるとともに、かりに議選の監査委員を廃止する場合には、監視機能を議会が担う必要を法制度上でも運用でも制度化するべきである。たとえば、監査委員制度導入にともなって、議会の権限としてなくなった「実地検査」権を付与することなどを想定している(14)

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