(ⅱ)単なる文献・資料の提供だけの狭いイメージの議会図書室
議会図書室の共同設置の提案は何に由来しているのであろうか。「議会図書室における文献・資料の充実など議会の担う機能を補佐・支援するための体制の整備・強化」は従来から指摘されていた(29次地制調答申)。31次地制調答申による議会図書室の共同設置は、幹事自治体の議会に設置してそれ以外の議会はそこから情報を得るというイメージを想定しているといってよい。それぞれの自治体は、公立図書館や行政資料室を充実させ、それと議会図書室との連携の方がより容易で充実する。そもそも、議会図書室は、「文献・資料の充実など議会の担う機能を補佐・支援」するだけではない、質疑、質問・答弁、陳情請願、参考人・公聴会、これらの資料が整備されているはずである。さらに、委員会や会派の調査・視察の資料もである。当該自治体の重要な争点、あるいは今後争点となるテーマの情報が集積されている。議会図書室は地域情報の宝庫であり拠点である(現行を考えれば「べきである」)(10)。議会図書室の充実は必要であるが、共同設置で行うものではない。
② 具体性なき幅広い人材の確保
議会の役割の重要性とともに、議員定数の減少・議員のなり手不足、政務活動費の不正支出などに見られる議会・議員不信への対応も重要なテーマとなっている(基本的な認識)。
しかし、このテーマについての危機意識は希薄であると指摘せざるを得ない。「議員に求められる役割」という項を設けて、議員の位置づけ・役割の明確化、および議員活動の透明性が議論されているが、前者は引き続き検討であり内容自体も後退しているし(28次・29次地制調)、後者はこれだけ世間をにぎわせているにもかかわらず「住民への説明責任」に留めている。
また、今日投票率の低下、議員の無投票当選者率の増加への対応は喫緊の課題である。31次地制調答申では「幅広い人材の確保」という項をおこしている。住民による議会・議員への理解からはじまり、より柔軟な議会開催(夜間・休日議会、通年会期制)、選挙制度、および労働法制(立候補に伴う休暇制度、休職・復職制度)や公務員法制(立候補制限や議員との兼職禁止の緩和)などが例示されている。住民による議会・議員への理解やより柔軟な議会開催といった運用で可能なこと以外(11)、法改正に至る提案はない。
ここで提起されたテーマは、地域民主主義にとって根本的な課題である。選挙制度、労働法制、公務員法制との関連は従来からも指摘されている。地制調での審議時間が不足していることは重々承知しているが、そろそろ住民自治、議会改革を真摯に考えるならば、この問題に抜本的なメスを入れる必要がある。