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2016.04.25 議会改革

第31次地方制度調査会と住民自治(下)

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(ⅰ)問題の多い議会事務局の共同設置
 これを読むと、本当に住民自治を進める議会を創り出そうとしているのか、議会事務局機能を充実させようとしているのか大いに疑問がある。共同設置は、議会事務局、および内部組織(たとえば法制担当課)も可能になった。活用できるのは、小規模議会だけではない。筆者は、法改正に伴い活用できる事項は大いに活用するべしという視点からさまざまな提案をしてきた。しかし、三議長会も含めてどこからも提案のなかったこの共同設置は、大きな問題を抱えているので疑問を呈している。しかも、31次地制調答申は、議会図書室にまで共同設置を提案している。筆者は、定型業務や、独立性・中立性・専門性が不可欠な業務(監査委員・監査委員事務局(後述するように、その際議会の「監査機能」の充実が必要)などが含まれる)などは共同設置によって充実すると考えている。しかし、はたして議会事務局や議会図書室が共同設置になじむのか冷静に考える必要がある。良心的な研究者や議会事務局職員等も共同設置論を提案しているので、簡単に何が問題かを確認しておこう。共同で作業することと(共同的な設置)、自治法上の共同設置には大きな隔たりがある。
 その前に、議会事務局の充実を議論するのであれば、市町村の議会事務局がいまだに任意設置であることを忘れるべきではない(自治法138②)。議会には議会事務局が不可欠なのである。議会(狭義:議員によって構成される機関)と議会事務局は車の両輪である。地方分権時代に必置制の強化はなじまないという意見も聞かれるが、都道府県議会で必置となった時点で、本来挿入すべきであったこと、忘れられていた事項を挿入するだけである。なお、この点は、監査委員事務局が市町村の場合、任意設置であることが問題なのと同様である(自治法200②)。
 共同設置は、幹事自治体(代表団体)に集約されることを前提とする。議会事務局の共同設置の場合、正確には議会事務局という機関(自治法138①②)と、その職員(同③)である。もちろん、構成自治体(関係団体)の議会の議決によって共同設置は行われ(規約の制定)、財政も構成団体から集められる。そして、指揮監督は構成議会議長が行うことになる。
 経費は構成自治体の負担であるが、幹事自治体の歳入歳出予算に計上され、幹事自治体の監査委員が監査を実施することになる(自治法252の11②④)。そもそも、共同設置する機関の執務場所は、明確に規約で定めなければならない(自治法252の8Ⅲ、抽象的な定め方ではなく、「具体的に場所を示すべき」ことになっている)(7)。また、共同設置された議会事務局の職員は、幹事自治体の議会の議長が選任し、幹事自治体の職員となる(自治法252の13、252の9③⑤:定数は関係自治体の議長が協議、選任にあたっては幹事自治体の議長が単独で行う場合と、関係自治体の議長が協議して候補者を選定しその中から幹事自治体の議長が行う場合がある)。
 議会事務局の共同設置は、それぞれの自治体の独自性を有した事務であり定型業務ではないこと、繁忙期が重なること、共同設置する議会間の利害が対立する場合に機能不全になること、などの理由からの慎重論も聞かれる。それ以上に問題なのは、原理的には(運用で構成自治体の議会事務局職員からの出向であり、執務は構成議会で行うということも想定できないわけではないが、それならば共同設置の意味は何かということに応えなければならない)、幹事自治体以外の議会に議会事務局がなくなるという「根無し草」状態に置かれることである。つまり、関係自治体の議会の議長すべてに指揮監督権限はあろうとも、幹事自治体の議会以外、議会事務局長(さらに一般的には職員も)はそこにはいない。したがって、二元的代表制を担う議会を支援する議会事務局にはなじまない。活用したくなければしなければよいという活用論ではなく、自治の問題である。
 なお、議会の充実のための支援策という根本の議論をクリアしていないが、内部組織の「法制担当課や法制担当職員等」の共同設置は、現段階での次善の策ともいえる(8)。その際、たとえば、町村議会における議会事務局職員の現状(2.5人)を踏まえて、法制担当という新たな機能を付した職員を共同設置に動員するという視点が必要である。常にそれぞれに配置されている議会事務局本体を充実させる視点からの改革が必要である。
 こうした共同をイメージするのであれば、「必要とあれば、共同設置の場合も含めて、議会に専門委員を置くことは可能」であるし(9)、都道府県ごとの市議会議長会(持ちまわりの慣習をなすことは前提)や町村議会議長会で専門家(弁護士・公認会計士・税理士・研究者等)を雇用し、それが各議会を支援することも考えられる。そもそも、こうした制度設計以前に、外部資源として専門家を各議会・議会事務局が活用してもよい。また、まさに今日進展している議会事務局職員ネットワークは、「共同的な設置」(香川純一町田市議会事務局担当課長)である。
 ともかく、議会事務局本体の共同設置は自治の原則から問題外であり、法制担当課の共同設置でも、また他の制度設置でも、まずは、議会自体、またそれに寄り添う議会事務局自体が、住民の福祉向上に向けた提案をする政治文化がなければそれらの制度は使いこなせない。

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