ゼロ回答
28日午後には、石破氏が出席し意見交換する場面もあった。その時間は石破氏の飛行機の都合で約1時間しかなく、半分は石破氏が説明に費やしたため、知事の発言時間はわずかしかなかった。
石破氏は「地方創生に失敗すると日本はなくなる。強い危機感がある」、「人口が減ることは国そのものがなくなる静かな有事だ」といつものような仰々しい語り口で、危機意識をあおった。その上で「地方の稼ぐ力、総合力、民の力を引き出す。地産外商も一つの考えだ」と高知県の施策を持ち上げた。
具体策としては、①観光客数はまだ先進国では最低なので、自治体や観光業界などによる組織「日本版DMO」(観光地域づくり推進法人)を設立し、広域のマーケティングや観光戦略づくりを行う、②第2の人生を地方で暮らしたいという都会人のために日本版CCRCを進める―ことを挙げた。
しかし、注目される地方創生の新型交付金については「予算額は1,000億円、事業費ベースで2,000億円を目指す」と表明した。来年度予算の概算要求が、 当初予算では初めての計上となり、いわば実質スタートとなる。予算規模は本気度を示す重要な機会と位置付けていただけに、知事会側にはがっかりの結果となった。
ただ、石破氏の発言に辛口に批判する知事も少数だった。「日本全体を変えるのに1,000億円は少ない。ぜひ上乗せを」(湯崎英彦広島県知事)、「コンシェルジュの活用は小手先だ。自ら政府が移転をするという意思を示すべきだ。自ら汗をかくことが大切だ」(川勝平太静岡県知事)。
石破氏も慣れたもので、地方移転についても「本当に大変。『文化庁がどうして京都に移るのか』となると理由付けも重要で、なかなか進まない。透明性のある形で決定したい」とその気にさせながらも、ことごとくゼロ回答だった。
最後に山田会長が「地方が必死に取り組んでいるが、国の制度と矛盾がある。例えば、子育て負担を軽減するため、子ども医療費助成制度を創設すると、国からペナルティーとして国民健康保険の国庫負担金が減額されるのはもってのほかだ。国の機関移転はやるという意思を示してほしい」とまとめるのがやっとだった。
石破氏は最後、知事の拍手と握手の中で会議場を去った。地方にとってはガス抜きにもならない状況だった。
石破氏から表明のあった地方創生新型交付金は国費で1,000億円、事業費ベースで2,000億円だった。
オンパレード
2日目には遠藤利明五輪相が出席した。遠藤氏が2020年に東京で開く東京五輪・パラリンピックについて「東京五輪ではなく、日本五輪として開催したい」と抱負を披露、さらにホストシティ・タウン構想を説明した。
この構想は、全国の自治体と大会参加の国・地域の人的・経済的・文化的な相互交流を図るため、自治体が、①交流の相手国に関する内容、②取り組みの内容、③事前合宿を行う場合はその内容―を盛り込んだ交流計画を作成し、内閣官房の推進本部事務局に提出して登録を受ける必要がある。
五輪という国民の夢には、厳しい批判も出にくい。「セーリングの会場になるが五輪の組織委員会と開催地の自治体の責任分担を明確にしてほしい。江の島の夏の交通渋滞対策に支援を」(黒岩祐治神奈川県知事)、「追加種目の被災地開催を。夢と希望を与えてくれるように」(内堀雅雄福島県知事)、「合宿誘致、CLT(直交集成板)の活用を」(高橋はるみ北海道知事など)と、キャンプ地の誘致、地元の木材を使った五輪関連施設の整備に向けた国へのお願いのオンパレードとなった。
最後に遠藤五輪相が「文化、情報、芸術の発信、運動会の輸出も含めて五輪を契機に世界に日本のスポーツ文化を発信する」と締めくくった。