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論評

2015.03.10 議会改革

議会が政策力を発揮するために~大津市議会全国初の「議会BCP」策定から見る政策検討会議の可能性~

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大津市議会の政策検討の仕組み

 議会BCPの策定に当たって主たる検討の場となったのが、大津市議会政策検討会議である。大津市議会は、いじめ防止条例など活発な政策立案活動で知られているが、その政策力の基礎となっているのが、平成23年に定められ各会派代表で構成され議員の発意により設置運営されるこの会議である。政策提案議員が座長になる点もユニークである。
 政策検討会議による議会BCPの検討は、平成25年6月の第1回会議から、平成26年3月の第10回会議まで、ほぼ毎月のように開催され、検討が重ねられた。通常の会議は10名の議員からなるが、これとは別に、平成26年3月には、全議員が参加する政策検討会議全体会において素案の報告が行われている。
 政策検討会議においては、議会BCPについての基礎的な理解を共有するところから始まり、大津市が直面している災害等の状況について情報収集をした後、市の台風水害の具体例を題材に議会や議員の活動のあり方について検討を始めた。災害等における議会や議員の役割を明らかにし、議会BCPの必要性や論点を確認した上で、BCPの方針や重要事項など体系について議論を行い、さらに具体的な内容の検討へと進んだ。そして、災害等の規模や種類に応じた議会や議員の標準的な行動、議会の体制整備、環境整備について取りまとめた。
 以上の検討の中心は会議に参加した議員である。専門家や防災担当職員、議会事務局による助言や支援も得ながらではあるが、基本的に、議員相互の討論を通じて、BCPの内容を練り上げていった。会議10回中7回はワークショップ形式で、自由に意見を述べ合い、議会のBCPとして備えるべき事項やその方向をつくり上げていったし、また疑問点や論点を議論の中で解決していった。もちろん、基本的な策定方針や具体的な行動基準などでは相いれないところもあったが、BCPの必要性について目的が共有されていったことで、むしろ合意形成への努力が全ての参加者によって積極的に進められた。
 実際のところ、執行機関の担当職員からの情報提供、意見の聴取などは有益であったし、何よりも議会事務局の努力は大きい。事務局職員は黒子役ではあるが、BCP策定という目標に向けて、様々な議論の中でともすれば着地点を見失いがちになりそうなところで、いわば進路を維持するために腐心を重ねていた。議会の政策対応に関して、政策情報の収集整理や適切な情報提供など、議会事務局の習熟や専門性の発揮も大きな力になっている。
 大津市議会のもうひとつの大きな特徴として、大学との協力協定を結んでいる点がある。龍谷大学を皮切りに、立命館大学、同志社大学と市議会との協定が取り交わされている。一般的には外部の専門的知見を議会に導入するという点では、これまでにも特定の専門や論点をめぐって、専門家の招致などが各議会で進められている。大津市議会の場合には、議会として大学といういわば知の総合的拠点と包括的に連携することで、様々な分野の多様な知的資産を重層的に活用できる体制を整えてきたということができる。
 議会によるこうした政策の検討の仕組みは、一般的に見られるようになっているが、現実には、仕組みはあっても機能していないところも多い。せっかくの仕組みの運用能力が問われるのだが、それにはやはり議会と議会人の成長と成熟の度合いの影響が大きく、そのための不断の努力が欠かせない。

(追記)
 筆者は、平成25年度、大津市議会における議会業務継続計画(BCP)の作成に際して、大津市議会と同志社大学の研究指導契約に基づき、専門的な助言を行うという名目で、大津市議会政策検討会議に参与させていただき、それに基づいて本稿が執筆できたことを申し添えておく。

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