人を育てる
事業をつくっているのは人であるという考えの下、私たちは町内事業者の人材育成にも力を入れています。特に次世代、次々世代のリーダー育成に力を入れたいと考えています。まず、次世代のリーダー育成に関しては、公益社団法人経済同友会と連携し、「人材留学」を行っています。これは、女川町の行政と民間の次世代のリーダー(行政では管理職候補、企業では経営幹部候補)が経済同友会に属する大手企業に1週間留学し、組織・人材マネジメントや商品開発、マーケティングなどを学ぶプログラムです。留学で学んだことが女川町に戻って仕事に生かされていくことはもちろん、留学先企業との人的ネットワークの構築により町外に相談相手ができることや本プログラムを通して町内の新しい連携が生まれるなど大きな成果が出ています。
次々世代のリーダー育成事業としては、2015年8月から実施するH-labが挙げられます。これはハーバード大学の学生と日本のバイリンガルの学生が県内外高校生を集め7泊8日で行うサマースクールです。このプログラムにより、次の世代を担っていく高校生を育てることをねらっています。女川町には高校と大学がないため高校以降は町の外に出ますが、将来の選択肢を広げて外に出て、大きく育ってまた女川に帰ってくる流れをつくっていきたいと考えています。継続的に実現できるように設計し、今年からスタートさせていきます。
「ヒト・モノ・カネ・情報」を見える化する
創業支援や人材育成等の過程で得た「ヒト・モノ・カネ」の数値による動きと町内で起こっている課題(産業界や暮らし)を数値による定量的な観点で見られるようにデータブックをつくる活動もしています。
この事業のヒントは、アメリカのニューオリンズがカトリーナの被害から復興する際に活用されたデータブックから得ました。2014年初めにアメリカへ視察に行き、10月にはニューオリンズのキーマンを女川町に招いて、行政や民間の皆さんにも入っていただき議論をしました。
女川町に限らず、地方では定性情報による議論は多数起こりますが、定量が見えないことで、議論が空中戦になってしまうことが多々あります。具体的な数値としてヒト・モノ・カネがどう動いているのかを見えるようにすることで、地域内での議論を地上戦にし、より具体的かつ効果的な議論を生み出せるようになります。町内の行政や産業団体と連携し、アメリカの団体からも支援をいただいて、「ヒト・モノ・カネ・情報」を見える化していきます。
フューチャーセンター
これまでご紹介した創業支援や人材育成、データの見える化に加え、事業支援など、アスヘノキボウでは5つの事業を軸に活動してきました。これらの事業を実施していくための新しい拠点として、2015年3月28日にJR女川駅前にフューチャーセンターがオープンします。テーマは「町内と町外のヒト・モノ・カネ・情報の交流拠点」です。このフューチャーセンターの機能は上記の事業の拠点機能に加えて、ネット環境を整え自由に仕事ができるコワーキングスペースの提供、地元の方々の憩いスペース(デザインは地元の高校生による)、そしてフューチャーセッション(地域の課題を町内・町外の視点から議論をして課題解決策の検討、解決まで進める)も行います。フューチャーセッションでは、あるテーマにつき町内・町外問わず課題なども持ち込んでいただきセッションを行います。
内と外をつなぐ存在として
私たちは町内と町外をつなぐ「インフラ」として、主役である町の方々に寄り添い、町の方々が動きやすくなるための活動をしてきました。これからの地域活性に必要なものは、このインフラ機能だと私たちは考えています。別な言葉で言い換えると、民間の参謀、でしょうか。インフラを担う人や団体が地域に生まれることで、地方はもっともっと大きく変わっていくと思っています。
現在、私たちの団体には3名のスタッフがいますが、彼らも女川町の復興後は、他地域で次のインフラをつくるリーダーとして活躍してほしいと常々伝えています。彼らが他地域でそのような仕事をすることで、また人が集まり、次世代の地域のインフラ候補が生まれていくと思っています。そのようなことを願いながら、アスヘノキボウは毎日、ご紹介した事業に汗をかいています。