私たちが考える地域活性
「特定非営利活動法人アスヘノキボウ(以下「アスヘノキボウ」という)」は被災地の経済的な復興や地域活性を行う法人です。宮城県女川町を本拠地に、公民連携で進められている復興まちづくりのパートナーとして活動しています。主に、まちづくりの内容に合わせ、外と内の「ヒト・モノ・カネ・情報」をつなぐ『公民×外連携』の実現、さらに町内で「ヒト・モノ・カネ・情報」の促進を行うトライセクターリーダーとして、町内と外をつなぐ、『インフラ』の役割を担う仕事をしています。
私たちは、地域活性とは「地域外から『ヒト・モノ・カネ・情報』を地域に流入させ、流入した『ヒト・モノ・カネ・情報』とその地域で生まれる『ヒト・モノ・カネ・情報』が地域内で循環することにより、地域が活性することである」と考えています(図)。
これが繰り返されていくと、地域のブランディングが促進され、さらに地域外から「ヒト・モノ・カネ・情報」が入る流れが大きくなります。したがって、現在、地域活性の大きな論点になりつつある「人口増加のみの地域活性論」には少し違和感を持っています。地域活性の論点で重要なことは、その町の財政が維持され、その地域に合わせた働きやすい環境、暮らしやすい環境をつくることです。つまり見るべき視点は、ヒト(労働人口、交流人口、居住人口等)だけではなく、モノ(外貨を獲得するモノ、地域内のカネを獲得し循環させるモノ等)、カネ(地域内の産業で獲得する外貨、地域内で循環させるカネ等)、情報(地域で役立つ地域外情報、地域内で昔から慣れ親しまれた知恵等)がその地域に合うようなバランスになっているのかです。定量で測りやすいヒト・モノ・カネ、定性で測ることが多くなる情報、これらをトータルで見ながら地域を見ていくことが重要です。
創業を支援する
事業は、地域にヒト・モノ・カネ・情報を集め、そして循環させるために非常に重要な装置です。私たちは、震災を機に起業したい方を中心に、女川町内では6つの事業の創業支援を行いました。地元の主婦が起業し郷土料理を楽しめるカフェごはん、同じく主婦による東北初のスペインタイル工房、女川町の80%以上を占める山を守り散策ガイドを行う協会、Uターンした若者が営むクラフトビール店、同じくUターンをした若者が営むカフェ、被災した事業者4社でトレーラーハウスでできたホテルなどを立ち上げました。
支援の過程で私たちが大事にしたのは、女川町のまちづくり計画とビジョンとの連関です。私たちが地方で創業する上で一番大切であると考えていることが、「町になじむ」ということ。具体的に町になじむためには、行政や民間が目指す町の形(計画やビジョン)という大きな幹を理解し、その幹の枝葉になるように創業者を支援していくのです。そうすると、創業する側もまちづくりの方向性をしっかり理解しますし、何よりも町の中で違和感がない形の事業が生まれ、創業後も町内の協力(行政から民間まで)が得られやすいのです。
創業は町をデザインしていくものであると考えています。町のことを理解しない創業者、町の方向性を示せない町では絶対にこれは成立しません。
私たちは創業者の思いを受け止め、町の目指すビジョンを受け止め(女川町はこの部分が公民連携で非常によくつくられています)、2つをつなぎながら創業支援を行っています。私たちが支援した事業は様々な機会で行政、民間から支えられて事業を継続しています。「町の課題解決策」が町の計画であり、ビジョンであるため、それを一緒に解決するパートナーの一部を創業者が担う。それが私たちの目指すところです。