選ばれる自治体のブランド戦略
──持続可能性と多様な主体の連携
以上のように、函館市では「リピーター重視の観光戦略」を採用し、弘前市では市民参加を含む「オール弘前」での情報発信に取り組み、各々の手法でプロモーションを推進している。両市とも地域ブランドでは「市民の誇り」を重視しており、単なる一時的なイベントに終わらせない継続的な工夫をしているといえよう。観光資源(魅力)が地域ブランドの必要条件であるとすれば、市民に支えられた持続可能性はブランド戦略の十分条件である。
また、函館市、弘前市に加え、青森市そして八戸市の4市での青函圏観光都市会議が、北海道新幹線開業を視野に入れた広域連携を行っている。これまで北海道と青森県に分かれていた4市の連携事業は、中央政府とは異なる発想での地域の具体的自立に結びつく可能性を秘めている。その際の鍵は、自治体間の連携に先行している民間事業者の取組である。以前に比べ、地域経営において自治体の役割が相対化され、市民や企業を含む多様な主体の連携が強調されるようになってきている。読者の身近でも、このような変化が起こっているのではなかろうか。
*函館商工会議所地域振興課、函館市観光振興課、同市商業振興課(2014年10月30日訪問)、及び弘前市広聴広報課、同市国際広域観光課(2014年11月7日訪問)には、資料や情報提供において特にお世話になった。この場を借りて謝意を表したい。
⑴ 株式会社ブランド総合研究所「地域ブランド調査2014 上位100市区町村ランキング」(2014年)http://tiiki.jp/news/05_research/survey 2014/2329.html(2014年11月9日アクセス)。
⑵ 函館市観光部観光振興課『函館市観光基本計画 2014-2023』(2014年)42頁及び35頁。
⑶ 函館市観光部『函館市の観光 平成26年度』(2014年、印刷資料)。
⑷ 弘前市シティプロモーションの目的では、次のように説明されている。「弘前の魅力を創り出し、それを国内外に情報発信し、都市ブランド力・都市イメージ・認知度の向上を図ることで、交流人口を拡大させ、観光産業の充実など、新たな活力の創出に結びつけていきます。そしてこのような力を農業や商工業を含めた産業全体へ波及させることにより雇用やビジネスチャンスにつなげていくことを目的とします。また、自慢できる弘前の魅力資源を再発見することで、郷土に誇りと愛着を持ち、まちづくりに積極的に関わる市民の増大を図り、弘前市の持続的な発展により『子ども達の笑顔あふれる弘前づくり』を目指します」。弘前市「いいかも!!弘前〜弘前シティプロモーションサイト〜」http://www.city.hirosaki.aomori.jp/city_promotion/about.html(2014年11月9日アクセス)。
⑸ 「地域ブランド会議 全国123自治体参加」東京新聞2014年11月1日。