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特集 地方創生

2015.01.10 まちづくり・地域づくり

人口減少時代のシティプロモーション シティプロモーションのための地域ブランド戦略

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「オール弘前」での情報発信──市民の誇りがプロモーションのエンジン

 次に、弘前市の取組を紹介したい。弘前市のシティプロモーションの歴史は比較的新しい。2010年のプレイベントから始まり、2011年の弘前城築城400年に続く2年間の「弘前城築城400年祭」の効果を受けて、2012年度から本格的にシティプロモーションに取り組むこととなった。2012年には国際広域観光課を設置している。弘前市単独では西日本や海外での知名度が不十分であり、課題でもある。そこで地域外に向けて知名度アップや情報発信力を高めるとともに、地域や市民全体の能力強化も図りたいというのがシティプロモーションの目的であり、ブランド力や持続的な発展についても言及されている。なお、弘前市でも人口減少が進んでおり、その対策として、移住や定住にも取り組んでいる。また、シティプロモーションと広域連携の相乗効果も期待されている。
 弘前市のシティプロモーションの特徴は、市長はじめ、市職員一丸そして市民も一体となった「オール弘前」での情報発信にある。例えば弘前市の葛西憲之市長は「全国シティプロモーションサミット」(2014年10月31日、相模原市)において「市民が地域に誇りを持つことが原点で、プロモーションのエンジンになる」と発言している。この点は前述した函館の「市民の誇り」と同様であり、地域ブランドの土台である。また図2は、弘前市の経営計画(2014年5月23日議決)における地域経営のイメージである。新たに市民等による具体的な取組(市民行動プログラム)を定めており、例えば「市民参加型まちづくり1%システム支援事業」は経営計画の策定に先立って実施されている。このように市民の役割を明確にし、「オール弘前」として取り組んでいる。

図2:弘前市の地域経営のイメージ「オール弘前」図2:弘前市の地域経営のイメージ「オール弘前」

 また興味深い取組として、「さくら前線おっかけたい」がある。2014年4月に、福島県会津若松市、宮城県大河原町、山形県山形市、岩手県北上市、そして秋田県仙北市(角館)という東北各県の桜の名所を前年度の「弘前城ミス桜」と弘前市職員が訪問し、桜前線の北上を追いかけた。市のフェイスブックで発信したほか、各地のメディアにも取り上げられ、弘前のPRとなったばかりでなく、訪問先からも喜ばれたという。他地域からもオファーが来ており、新年度は別の視点で企画を考えているという。これも広域連携のひとつである。限られた予算の中、メディアの活用も重要であり、大手広告代理店の社員を市職員として採用している。広告のノウハウだけでなく、人的ネットワークにも期待しているという。また観光イベントの際には、弘前の特産りんごの物販も行う等、市の部局横断的取組も近年深化しているという。いずれも一朝一夕ではできない、継続的な努力の積み重ねが土台となり、人的インフラとして機能している。

青函圏観光都市会議
──道県を超えた広域連携

 2011年に函館と弘前の両商工会議所が「津軽海峡観光クラスター会議」を発足させた。その後、2013年3月に函館市(事務局)、弘前市、青森市そして八戸市の4市で「青函圏観光都市会議」を設立した(4市長が共同代表)。当面の基本的な取組は4市連携・各地域の知名度アップと周遊商品・キャンペーンづくりである。すでに4市共同のキャンペーンを実施し、2016年度には(仮称)青函圏博覧会の開催(ガイドブック作成による周遊事業)を計画している。青函圏ではかつての青函連絡船の時代から、婚姻関係なども含む人的交流が進んできた。その交流の歴史の上に、2015年度末までの北海道新幹線開業に伴う移動時間の大幅な短縮により、上記4市の合計100万人規模の広域観光圏が成立すると想定している。具体的な観光客の対象として、南東北や北関東を重視している。2014年10月1日、新幹線大宮駅のあるさいたま市で、函館・弘前・青森・八戸の4市長そろっての首都圏プロモーションが実施された。4市の中でも函館市と弘前市とは観光資源等の相互補完的な位置にあると考えられる。例えば「はこだてクリスマスファンタジー」期間に「ひろさきナイト」を開催し弘前市長も出席するなどの交流実績がある。
 注目したいのは、自治体間の広域連携に先行して、民間での交流実績が蓄積されてきたことである。例えば函館商工会議所がまとめた資料によれば「北海道新幹線開業に向けた民間事業者の取組」は、2010年4月から2014年6月までに新聞紙上に取り上げられた記事だけで171件に上る。このような民間事業者の取組等を背景として、自治体間の青函圏交流事業が進められていることを確認したい。

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