男性の政治と女性の政治の差異
これまで支配的であった男性の政治と比べると、女性の政治はどのような特徴を持っているであろうか。「ハイ・ポリティックス」と「インタレスト・ポリティックス」を支配してきた男性の政治は、対立する敵陣営に対抗するために戦闘的に有効な組織、すなわち指揮系統が明確な垂直型かつ閉鎖的な組織を形成した。
それに対して女性の政治はライブリー・ポリティックスに調和的なネットワーク型の組織を形成する。そこでは支配、服従の関係ではなく、原則的に平等な個人が対等の関係で協力関係をつくり出す。環境や福祉、教育、まちづくりなどのように、ライブリー・ポリティックスが追求する価値、政策は脱産業社会において普遍的に支持される可能性を持っているので、組織は周囲へと広がる開放的な構造になっている。ここでは多くの女性が有しているコミュニケーション能力が発揮されて、政策への支持が広がっていく。
女性の政治進出のための方策
女性の政治進出を推進するために、どのような方策が可能であろうか。まず、学歴については、高等教育を受ける機会は現在では男性に比べて劣っていないか、むしろ勝っているといってもよいくらいである。問題は社会的キャリアである。出産、育児に際して女性にその負担が偏っている状況は、ほとんど変わっていない。育児を終えて、キャリアを以前と同じレベルに戻すことは困難であるのが実情である。したがって人脈や資金の準備も途絶えてしまう。この点についての改善が根本的に重要である。
しかし、育児の過程においても地域において人脈をつくることは可能である。PTA活動が、その良い例である。同じ地域において、ほぼ同世代の女性たちが、育児・教育という経験をともにすることによって共感を伴った人脈が形成される。また、教育や給食、図書館などの問題をめぐって市民運動が生まれ、その解決のために仲間を議会に送ろうという機運が高まる。このようにして政治進出のきっかけが生まれる。実際に、全国の女性議員の多くはこのようにして誕生している。
政治資金については、米国で女性候補を資金的に援助するエミリー基金のようなものをつくろうという試みが行われたが、現在のところ頓挫している。政党に所属していない女性候補の場合は、カンパを募り、またボランティア活動によって選挙を戦っているのが実情である。地方議会選挙の場合には、このような方法で議席を勝ち取っている例が少なくない。
議員になるためのトレーニングについては、市川房枝記念会をはじめいくつかの組織が取り組んでいる。女性であるというだけでは、実際に議会で十分な活動を行うことはできない。選挙に挑戦する前に、また当選後も研修の機会を持つことは、優れた議会活動を行うために重要である。立候補する前に現職の議員の下でインターンシップを行うことも有効な手段である。議員活動に関する知識だけではなく、議員としての心構えを学ぶ機会にもなる。終局的には女性の政治が有効であることをアピールしなければならない。