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2014.09.10 女性と議会

議会は女性を待っている~「女性を議会へ!全国キャラバン─2015統一地方選を前に」~

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全国キャラバンで思いを届けたい

 このたび女性と政治センターで全国キャラバン開催に至ったのは、ひとつには市民グループ「女性議員をふやそう・ながさき」(当時)から資金の一部を、同じ志を持つ女性と政治センターに対して指定寄附をしていただいたことがあります。次に、韓国をはじめとして、アフリカなどかつて経済開発途上国といわれた国々で、女性の政治参加割合が大きく前進したことを受け、依然として低い割合にとどまっている我が国の現状に改めて危機感を抱いたことです。最後に、「平和なくして平等なく、平等なくして平和なし」を遺言として1981年2月に世を去った市川房枝の志を引き継ぐ女性と政治センターとして、戦後民主主義が危機的状況に陥っているという認識の下、国政選挙のための中間選挙ともいえる2015年の統一地方選挙を前に、ぜひ政策決定の場に女性を増やしたいというわらにもすがる思いで全国キャラバンの波及効果に期待したからです。
 全国キャラバン全体の基本的なプログラムは、①「女性の1票は平和のために」と常に女性たちを励まし、平和と平等を求め続けた市川房枝の生涯を記録した「八十七歳の青春─市川房枝生涯を語る」を上映、②「女性議員を増やすことがなぜ必要なのか」、「なぜ女性が政治の場に出にくいのか」を有識者と現職・前職議員が議論するシンポジウム、③「住民参加型選挙のノウハウ伝授」の3部構成としました。その上で、共催団体と内容を詰めた結果、3県3様のプログラムができ上がりました。
 今回の企画に当たっては、政治学者であり、『女性が政治を変えるとき──議員・市長・知事の経験』(岩波書店、2012年)を執筆するなど、女性の政治参画に詳しい五十嵐暁郎立教大学名誉教授、そして全国各地で女性リーダーの育成運動を実施している一般社団法人大学女性協会、若者と政治をつなぐ実践的な活動をしている「ポリレンジャー」の皆様の温かく強力な援助を経て実現にこぎ着けました。

全国キャラバン!in 長崎〈4月19、20日〉
(共催/一般社団法人大学女性協会長崎支部)
 最初の全国キャラバンは長崎県で開催されました。前日まで「参加者は30名くらいか?」と現地の方々が気にされていたのですが、蓋を開けてみれば、雨の中をJR長崎駅前の交通会館に約70名が参加しました。フロアーには一般市民のほか、大勢の現職議員、前職議員の参加があり、「女性と議会」というテーマへの関心の高さもうかがうことができました。
 キャラバン1日目は、市川房枝の「八十七歳の青春」DVDを上映し、国武雅子長崎純心大学講師に市川房枝が伝えたかったことについての講義をしていただきました。続いて、五十嵐教授によるコーディネートの下、パネルディスカッション「女性議員が必要な理由」が始まりました。パネリストは中嶋玲子氏(福岡・元杷木町長)、大河巳渡子氏(東京・調布市議)、清水絹代氏(山梨・都留市議)、鈴木規子氏(愛知・西尾市議)。
 パネリストからは、「金権選挙への疑問から2回も落選しながらも諦めずに3回目に初志貫徹し首長のお目付役として頑張っている」経験や、「女性と政治センターの議員養成講座受講をきっかけとして手づくり選挙で立候補した」、「頑張る人なら男でも女でもよいと市民からの応援を受けトップ当選をした」など、それぞれが議員となったきっかけが語られました。また、女性と政治センターで「住民参加型選挙」と呼ぶ草の根の市民運動をベースとした選挙で当選した結果、「ハコモノ行政から介護や子育て等を重視したまちづくりの方向に政策課題を転換できた」、「議会傍聴者が増え政治に関心が広がり、市民自治が実感できるようになった」、「宅老所の整備が一挙に進んだ」、「女性管理職が増えた」など、住民参加型選挙を経て当選したからこそ実践できる政策があることについて語られました。
 2日目は、住民参加型選挙のノウハウを女性と政治センターの企画運営委員が選挙グッズを携え伝授した後、参加者によるグループ討議を行いました。「選挙のハードルが低くなった」、「チャレンジしたい」、「応援したい」との頼もしい声が各グループから聞かれました。その後は、長年長崎の政治風土を取材してきた大嶋真由子氏(長崎文化放送アナウンサー、記者)と田崎智博氏(長崎新聞社論説委員)両氏と五十嵐教授によるクロストークを行いました。県民不在の県政、激しい政争を繰り返す首長選、汚職のまん延する地域の問題、二世議員や政党所属の議員が多く無所属の当選は難しい、合併により女性議員が出難くなったなど、地方議会にチャレンジしようというときに壁になる、政治に対するマイナスイメージをどう払拭するか、などの問題提起がなされました。

ポリンピック!in 島根〈5月11、12日〉
(共催/島根大学「ポリレンジャー〜若者の手で政治をよくし隊!〜」)
 島根県での全国キャラバンは、若者と政治をつなげる活動をしている「ポリレンジャー~若者の手で政治をよくし隊!〜」との共催で「ポリンピック!─女性×若者×政治=?」として実施しました。60名の参加者(半数が若者、残りは40~60代の男女)が6テーブルに分かれ、ワールドカフェ方式で意見交換をし、会場で意識を共有するところから始まりました。
 パネルディスカッションでは、はくいし恵子氏(島根県議)がコーディネーターを務め、パネリストに20代の井上温子氏(東京・板橋区議)、40代の岩本雅之氏(島根・松江市議)、石原遥菜氏(島根大学生・ポリレンジャーメンバー)が参加しました。「若者の政治離れがいわれて久しいが、ポリレンジャーの調査では60%の若者は政治に関心がある」、「団地活性化プロジェクトのまちづくりを仲間と行っていた折、議員さんたちが視察に来たが、若者たちの声を聞いてくれないので、いっそ自分たちが出た方がよいと出馬」、「若い世代は共働きが増えているのでパートナーの抵抗は少ない」等の発言がありました。
 2日目は毎熊浩一島根大学准教授の政治行政学公開講座を受講する約100名の学生に向け、女性と政治センターより市川房枝の紹介と、参加メンバーの議員活動について説明をしました。公開講座では若者たちの目が輝き、積極的な質問がありました。後日送られてきた学生たちのレポートには、「理想選挙の大切さ」や「女性の被選挙権行使が少ないのは確かにおかしい」、「憲法を理解することの重要性」、「公約を守っているかどうかチェックすることが大切」など、率直な意見や感想が丁寧な文字でつづられていました。

活発に意見交換のあったワールドカフェ(島根会場)活発に意見交換のあったワールドカフェ(島根会場)

全国キャラバン!in 石川〈7月12、13日〉
(共催/一般社団法人大学女性協会金沢支部)
 石川県での全国キャラバンは、県女性センターを会場に、初日は60名の参加で始まりました。1日目は長崎県と同様に市川房枝の「八十七歳の青春」DVDを上映した後、パネルディスカッションを開催しました。パネリストは酒元法子氏(石川・能登町議)、広岡立美氏(前石川県議)、細川かをり氏(福井県議)、水口裕子氏(石川・内灘町議)、山本由起子氏(石川・金沢市議)、コーディネーターは五十嵐教授が務めました。ディスカッションでは、政治家を志したきっかけとして、政治家を応援するミニコミ誌づくりや東日本大震災後に防災力を上げる必要性を感じたことなどが挙げられました。今後実践したい政策課題としては、防災問題、ダイオキシンごみ問題や男女平等教育など、生活に根差した課題やジェンダー問題が多く挙がりました。また、女性議員として政治活動を進めるために、「継続するには絶えず理論武装が必要」、「心を動かすコミュニケーション力を磨くこと」などの課題の共有や「女性議員が少ないと政策に偏りが生じるので女性同士のネットワークづくりが大切」、「後に続く女性のために道をつけたい」と今後への展望を語る場面もありました。五十嵐教授からは「日本は女性議員が少なく世界で孤立している」との指摘もありました。
 2日目は選挙のノウハウ伝授とグループ討議の後、県内で様々な分野で活動している赤井朱美氏(元テレビディレクター)、常光利恵氏(NPO法人理事長)、宮貴子氏(障がい者ガイドヘルパー)の3氏によるクロストー

フロアーからも数多くの意見が出された(石川会場)フロアーからも数多くの意見が出された(石川会場)

クから始まりました。赤井氏は1975年参議院法務委員会での市川房枝の発言内容を紹介した上で「当時の軍国主義的自民党政権批判と現政権の集団的自衛権容認は同じ、大変危険であり、命を守るために、女性たちが手をつなぐことが大切」と強調。そのために全面的に女性を応援すると述べました。常光氏は「様々な意思決定のポストに女性が必要。風土を変えるには、風景を変えることが大切。女性たちの背中を押し、意思決定の場に送ろう」と提言。宮氏は海外留学の経験から「外国では子どものときから自由に発言する習慣をつけている。子どもたちが自分の意見を自由に発言できる環境づくりを」と、現在取り組んでいる障がい者支援活動を披露。フロアーからは政治塾の必要性、家庭内でもっと政治を語ること、女性センターなど自治体が行政課題として取り組むべき等多くの意見が出されました。

〈全国キャラバン参加者の声〉
●「地縁血縁に縛られ投票率は高いが、浮動票の行き場がない」
●「草の根選挙は難しい」
●「県政を変えなければ長崎は変わらないと県政にチャレンジし惜敗」
●「デンマークを視察し平等な国は幸せな国を実感し、差別や偏見を変えたいと車椅子で挑戦し当選」
●「国政を地方からひっくり返そうと配偶者の応援で市議に」
●「議会を可視化するため、ずっと議会報告会を行っている」
●「失敗しても様々なバッシングを乗り越えて何度もチャレンジすること」
●「女性のコミュニケーション能力を生かし、女性を政策決定の場へ一歩先に進めよう」
●「世間の常識、議会の非常識の実態をもっと知る必要がある」
●「男性は群がりたがるが、女性は一人会派でもやっている」
●「議員を身近に感じるために若者のインターンシップ制を大学に働きかけては」
●「まだまだ女性議員はマイノリティ」
●「マスコミは女性政治家の活動にもっと注目してほしい」
●「こんなに女性議員が少ないことを知らなかった」
●「未来を決めるのは若者たち、しがらみのない若者がもっと出た方がよい」
●「政治教育を学校や女性センターで行い、政治参画を呼びかけては」

自らの努力によって民主主義社会を創る

 今回の全国キャラバンでは、3県3会場でそれぞれ2日間にわたり熱い議論が交わされました。女性と政治センターでは長年女性の政治参画を応援してきましたが、女性自身の自己評価は10年前より格段に前進していると考えます。今回の会場でも「行動する女性たちが政治を変えてきた」、「暮らし、命は女性たちが守っている」、「女性のコミュニケーション力は抜群」などの力強い声が聞かれました。加えて、社会からの女性に対する期待も高まっています。全ての会場で、次の選挙にチャレンジしたいと意思表示された方がおられ、会場は熱気に包まれました。しかしながら、それでも女性議員を増やすための特効薬はいまだ見つかっていないと考えています。
 さあ! 行動に移しましょう。男性だけに政治を委ねる時代は終わりました。立候補者が全て当選するわけではない以上、より多くの女性が立候補しなければ女性議員の数は増えません。女性に比べ、男性たちは積極的に政治キャリアを積み上げているではありませんか。1度や2度の失敗は当たり前として、あとは女性自身の決断あるのみです。立候補者を増やすことから、始めませんか? そして応援する人は我がこととして候補者と一緒に政治に参加してください。民主主義社会は他人任せでは生まれません。政治への主体的な関わりこそが民主主義社会を創るのではないでしょうか。女性と政治センターはそのためのお手伝いをする場です。ぜひ、いらしてください。
 市川房枝の志は今もなお古びていません。私は、社会の半分を構成している女性が勇気を持って議会に進出し、政治の質の向上に努めることが今求められていると考えます。自信を持って一歩踏み出そうではありませんか。そこには、多くの出会いがあり、あなたの勇気が人々の笑顔となり、やがて地域を豊かにします。
 市川房枝記念会女性と政治センターは、皆さんを心から応援しています。

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