そこに「市民」がいない
先日、ある自治体職員の研修にアドバイザーとして参加した際のこと。
自治体の抱える課題を取り上げ、その課題を解決する対策を立案するという研修プログラムで、多くのグループが取り上げたのは、自治体組織の中で働く公務員自身の労働環境の問題でした。
「時間外勤務が常態化している」、「休暇をとりづらい」、「忙しい人とそうでない人の格差が激しい」、「やりたい仕事に就けない」、「若手とベテランの意思疎通が希薄」など、きりがないほどの「働きにくさ」が列挙され、またそのことに関連して「早期退職者が多い」、「病気休職者が多い」、「採用倍率が落ちている」、「昇任希望者が少ない」、「職員のモチベーションが低い」といった現象も多数述べられました。
全国どこの自治体でも同じ悩みを抱えていること、しかもその悩みは深刻で、すでにかなり危機的な状況であるように思われました。
私は、彼らが研修の中で立案する予定の労働環境改善プロジェクトの概要を一つひとつお聞きする中で、少しずつ違和感が高まっていき、あるグループのプレゼンでとうとう口火を切ることにしました。
「どうして『市民』が出てこないのですか?」
彼らのプレゼンでは、自治体組織の労働環境に関する現状や課題、それに対する解決方策の検討の方向性や現時点でのアイデア、さらにはアイデアを実現するための人事課等関係部署の巻き込みまで書き込まれていましたが、どのグループもそのプロジェクトに関係するセクターとして「市民」という存在が出てこなかったことに私は違和感を覚えたのです。
労働環境の改善は、主に職場をマネジメントする管理職の意識改革やマネジメント力の強化に加え、組織運営、人事管理全般をつかさどる人事・組織部門が自治体全体として取り組む方向性を示し、それを担保する制度・仕組みを創設・運用することが解決策として考えられますが、そこには「市民」は登場しません。
多くの自治体で直面している「働きにくさ」の改善についての私たち公務員の意識が組織の内側に向き、組織の外側に向けられていないことを如実に表しているわけですが、公務員の「働きにくさ」の改善は内部管理事項であり、管理職や人事課、あるいは我々職員自身が努力して改善していくことだけがその処方箋と考えてよいのでしょうか。
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