元・大和大学政治経済学部教授 田中富雄
はじめに
本稿では、「自治体の必要性と自治体議会の未来」と、これらに関する事項について再考します。そして、その上で政策過程において、これらの言葉を発するときの「自治体議員の発言に期待される含意と政策」について考えたいと思います。
「自治体(市町村・都道府県)の役割・権限・事務」と「国の役割・権限・事務」
はじめに、自治体の「役割・権限」を考えてみましょう。地方自治法(以下「法」といいます)1条の2第1項では、市町村は「住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する」と規定されているように、市町村の役割は住民の福祉の増進を図るために、地域における行政を自主的かつ総合的に実施することです。なお、市町村が処理する事務(法2条3項)は、地方公共団体の事務のうち、都道府県が処理するものを除く事務を担当すると規定されています。つまり、都道府県が扱うべき広域的・専門的な事務以外は、原則として市町村が担います。
都道府県が処理する事務(法2条5項)は、地方公共団体の事務のうち、市町村が処理することが適当でないものを処理します。つまり、広域的、専門性が高い、市町村単独では対応が難しい事務を行います。これは、市町村を補完する役割(補完性の原則)であり、市町村が基礎自治体として一次的に事務を担い、市町村では対応が難しい部分を都道府県が補完するという構造になっています。この条文は市町村の条文(法2条3項)と対になっており、両者の役割分担を明確にする仕組みです。
地方自治法は「国の役割」についても明確に位置付けています。市町村や都道府県の役割と対比すると、国は全国的な行政の統一性を確保しつつ、地方自治を尊重する存在として描かれています。国と地方公共団体の関係(法1条の2第2項)について、国は、地方公共団体の自主性及び自立性を尊重しなければならないと規定しています。これは、国が地方を一方的に支配するのではなく、地方自治を尊重する立場にあることを明確にした規定です。国が行うべき事務(法1条の2第2項)については、国は、全国的に統一して処理することが適当な事務を行うと定められています。国は「上位の支配者」ではなく、すなわち、「上下・主従」の関係ではなく「対等・協力」の関係にあり、地方自治を尊重しつつ、全国的な行政の統一性を担保する役割を持つという構造です。
自治体(市町村・都道府県)と国の具体的な事務は、表1に示すようなものですが、これらの事務の必要性と水準は、換言すると「シビル・ミニマム」や「ナショナル・ミニマム」と呼ぶことができます。
出典:筆者作成
表1 自治体(市町村・都道府県)と国の具体的な事務(例)
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