元・大和大学政治経済学部教授 田中富雄
はじめに
本稿では、「『世界のルール』と自治体議会」と、これらに関する事項等について再考します。そして、その上で政策過程において、これらの言葉を発するときの「自治体議員の発言に期待される含意と政策」について考えたいと思います。
「科学(者)のルール」「政治(家)のルール」と「世界のルール」「地域のルール」、求められる「世界のルール」
ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹は、久野収との対談で、「18、19世紀の科学者は専門の研究を一生懸命やっていればそれで人類の幸福になるだろうと考えていた。専門の研究をやることももちろん科学者の社会的責任であるが、いまや問題はそれほど簡単でなくなってきた。(略)先行きの危険がわかっているのに、知らん顔しているのはよくない。原子力の問題が出てきたのは1930年代の終わりからだが、それとともに新しい時代が始まったのだ。学者の方も時代に対応して考え方を変えていかなければならない。時代は決定的に変わったのだ」(湯川 1998:79)、「隣国同士だって仲の悪いこともあるだろう。(略)お互いに、言い分はあるはずだ。いくら気に食わない相手でも、そこにはそれ相応の理屈があるはずだ。相手の言い分を聞くことはお互いにプラスにもなることだろう」と述べています(湯川 1998:82)。対談の相手であった久野は、「みんなが責任を分担して平和に到達しよう。(略)闘争本能は、ルールを持った競争本能に代えることだ」と述べています。(久野 1998:82)。これら湯川や久野の考えは、「科学(者)のルール」「政治(家)のルール」と「世界のルール」「地域のルール」を表しているといえるでしょう。
ところで、地域社会や自治体・国を越え世界に広がる科学は、科学に必要な人・学問・鉱物資源・生物資源などの「科学資源」を必要としますが、その科学資源は世界にまたがっています。そうすると、科学は全世界の人々が共有することが望ましいといえます。科学は、限られた地域や国の人々だけが利用できるものであってはなりません。
科学の進歩は、食料・健康・医療・福祉・交通・土木・建築など私たちの生活に大きく関わっています。また、科学の進歩には、いろいろな主体の連携・協力が必要になります。例えば、市民や政治家との連携・協力です。治験には個々の市民が連携・協力し、治験の制度づくりにおいては専門家や政治家が連携・協力することが求められます。そして、治験の制度は国により異なりますが、治験自体は世界的に行われ情報が共有されています。
なお、分業と協業に際しては、人や自治体・国・国際機構そして地球の限界──例えば、気候変動や生物多様性の喪失など自然環境面での限界をはじめ、人口急増や「貧困と格差」という社会面での限界や、資源の過剰消費や廃棄物の増加という経済面での限界は、相互に関連しています。これらの限界を無視すれば、世界に不安を招きます。持続可能な未来のためには、これらの限界を正しく認識し、統合的な対策を講じることが求められます。
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