広島県廿日市市総務部課税課
1 条例制定の趣旨・概要
(1)背景
宮島は、神の島として崇(あが)め慈しまれてきた自然と文化・歴史のまちであり、国内はもとより国外からも多くの観光客が訪れる世界的観光地です。
宮島訪問税創設の原点は、多くの観光客の来訪によって必要となる行政経費が増大し、宮島地域の市税収入ではそれを賄うに十分ではなく、不足する経費の多くを廿日市市全体の法定普通税で担っていること、また、地方固有の一般財源である地方交付税においても、外部からの来訪者を算定基礎とする措置がなされていないことにあります。
(2)経緯・取組
宮島に係る新たな財源確保策の検討は、今から十数年前に遡ります。
廿日市市は、平成17年11月3日に宮島町と合併し、合併による財政の効率化を図ってきたものの、宮島地域における市税及び地方交付税で賄えない行政経費の額は、年間約2.5億円に膨らんでいました。
合併後に執行された平成19年の廿日市市長選挙では、宮島への「入島税」の導入が選挙公約として掲げられ、平成20年度、さらに平成27・28年度の2度にわたり、宮島地域の安定的な財源確保策として制度検討を行いました。
この2度の検討では、いずれも宮島に入島する行為を課税客体とする税制度の検討を行いましたが、宮島地域の生活者等を観光客と同様に取り扱うことに関しては、合理性や正当性の説明が難しく、新税の創設までには至りませんでした。
3度目となる令和元年度の検討においては、専管組織となる宮島財源確保推進室や学識経験者、地域経済団体等からなる「宮島財源確保検討委員会」を設置し、制度の仕組みを見直すこととしました。
同委員会からは、宮島へ来訪する多くの観光客によって発生し、又は増幅する行政経費について、その行政経費を発生・増幅させた原因者に応分の負担を求める「原因者負担」に課税根拠を見直すよう提案がありました。
この原因者にのみ課税する考え方への転換により、一番の問題点であった宮島地域の生活者等を課税対象から除くことについて、論理的な整理が可能となり制度検討が飛躍的に前進することとなりました。また同時に、税の賦課徴収方法についても、旅客船舶による運賃と併せて税を徴収する特別徴収や個人船等による申告納付の手法についても検討が進み、市独自の税制度導入に向けた準備が整うこととなりました。
その後、国や県などの関係機関とも協議を重ねながら税制度の概要をまとめ、新税の必要性や理論等については、市民、市議会へ幾度となく説明を行い、併せて条例素案に対するパブリックコメントの実施や特別徴収義務者との徴収方法の個別調整等を経て、令和3年2月に条例案を市議会に提案しました。
条例案の提案までに、市議会においては、議員全員協議会が4回、学識経験者を交えた会派合同研修会が1回、総務常任委員会所管事務調査が7回行われ、議員間で活発な討議が行われました。
廿日市市宮島訪問税条例は、令和3年3月15日、定例会において賛成多数で可決され、3月16日公布、7月21日に総務大臣同意、そして令和5年9月1日施行され、念願かない同年10月1日から宮島訪問税の徴収を開始しました。
ここまで、平成20年度の検討開始から足かけ15年間を要しましたが、本条例の制定及び徴収開始は、この過程に関わった全ての方々の熱い思いと努力の結晶といえるものです。
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