東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 金井利之
自治体の比較可能性
自治体は様々な意味で固有性を帯びている。自治体は唯一無二の存在であり、簡単に比較対照できるものではない。しかし、同時に、自治体は多数性を大きな特徴としている。それぞれに似た面がある類的存在であり、それゆえに比較対照が可能になる(連載第27回~第31回)。もっとも、すでに論じたとおり、どの自治体と比較するのかという対象設定は、一義的ではありえない。むしろ、どの自治体と比較するべきかという決定自体が、個々の自治体において固有性を帯びることがある。
自治体を比較するときには、いくつかの側面がある。
第1は、比較の客体・対象である。一つには、どの自治体と比較するかという前提レベルの決定が必要であり、また、二つには、その上での具体的な比較の作業が必要になる。しばしば、どの自治体と比較すべきかについて、ある程度のコンセンサスや常識があれば、前提レベルの決定自体が問われることはないかもしれない。そもそも、ある程度の比較対象としての前提レベルの合意がなければ、入り口で疑問が生じるから、比較作業の結果が訴求性を持たないからである。もっとも、比較対象を変えること自体、あるいは、比較対象を選択すること自体も、これまでの“常識”又は“思い込み”を改めるため、意味を持つことがあろう。
つづきは、ログイン後に
『議員NAVI』は会員制サービスです。おためし記事の続きはログインしてご覧ください。記事やサイト内のすべてのサービスを利用するためには、会員登録(有料)が必要となります。くわしいご案内は、下記の"『議員NAVI』サービスの詳細を見る"をご覧ください。