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2024.02.26 政策研究

議員提案政策条例の方向性に関する一考察 ~条例を介した法律の積み残し課題への対応を題材として~

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議会事務局実務研究会会員/自治体学会会員/新潟県議会事務局 滝本直樹

1 はじめに~自治体における条例制定環境の現況と課題~

 地方自治法に規定されているとおり、首長及び議員(含む委員会)双方とも条例の提出権(同法149条1号、112条1項、109条6項)を有しているが、都道府県議会における提出者別条例提案数の推移を見ても分かるとおり、知事提案の条例数が、議員(含む委員会)提案のそれを圧倒している(表1参照)。自治体議会の政策立案能力を示す指標の一つとして、議員提案政策条例(1)の制定件数を採用する事例が見受けられるが、一部の自治体議会を中心に2000(平成12)年4月の地方分権一括法の施行等を契機として、当該条例の制定件数が飛躍的に上昇した(表2参照)。それに伴い、議員提案政策条例に係る自治体議会の認識に制定件数至上主義がまん延するとともに、条例内容が酷似する事例も散見され、政策条例の制定が手段ではなく、目的化しているとの指摘もなされている(2)。加えて、議員提案あるいは首長提案を問わず自治体の近年における条例制定環境に目を転ずれば、法令の「過剰過密」問題が、地域の実情に即した条例制定の足かせになっていると警鐘を鳴らす研究者もいる(3)
 ただ、その一方で、積み残し課題を有する法律も散見されており、この法律の積み残し課題による弊害が自治体の現場で顕在化している事例もある。ここでは、2013(平成25)年6月に制定された「いじめ防止対策推進法」の立法過程や当該法と一部の自治体で制定された「いじめ(等)対策条例」との比較を通じ、まずは、法律の積み残し課題の把握・分析を試みる。併せて、その課題が自治体の現場に及ぼす影響、さらには、その課題克服に向け、関連する中央省庁との縦の関係に拘泥されやすい自治体職員とは異なり、住民との多様な接点を有し、多角的な視点を有するとされる自治体議員に期待される役割について考察を行う。
 なお、本稿中に示す見解は全て筆者個人の私見である。したがって、所属する組織の見解を示すものではないことを申し添える。また、本稿は、2023(令和5)年8月25日に開催された自治体学会川崎大会(全国大会)研究発表セッションFにおいて筆者が行った報告を加筆したものであり、発表の機会を設けていただいた自治体学会関係者に対し、この場を借りて御礼申し上げたい。
1

表1 都道府県議会における提出者別条例提案数の推移(暦年)

2

表2 都道府県議会における議員提案政策条例の制定数の推移(暦年)

(1) ここでいう「議員提案政策条例」とは、議員又は委員会が提案した条例(含む改正条例)のうち、議会に関する条例(含む地方自治法96条2項を根拠とする行政計画議決条例、議会基本条例)及び議員の身分等に関する条例以外の政策的な行政関係条例を指す(表2参照)。
(2) 例えば、出石稔「議員提案条例のあり方②─『乾杯条例』から考える」ガバナンス211号(2018(平成30)年)107頁参照。
(3) 法令の「過剰過密」問題については、例えば、礒崎初仁「法令の過剰過密と立法分権の可能性─分権改革・第3のステージに向けて」北村喜宣=山口道昭=礒崎初仁=出石稔=田中孝男編『自治体政策法務の理論と課題別実践─鈴木庸夫先生古稀記念』(第一法規、2017(平成29)年)192〜195頁参照。なお、同論考では、法令の過剰とは、国内のほとんどの領域について必要以上に法令が制定されている問題であり、法令の過密とは、各法令が必要以上に細部まで規定している問題である旨記述している。

 

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滝本直樹(議会事務局実務研究会会員/自治体学会会員/新潟県議会事務局)

この記事の著者

滝本直樹(議会事務局実務研究会会員/自治体学会会員/新潟県議会事務局)

議会事務局実務研究会会員、自治体学会会員、新潟県議会事務局議事調査課長。新潟大学大学院法学研究科修了(法学修士)。平成7年新潟県庁入庁。令和4年度から現職(議事調査課勤務3度目、同課通算12年目)。平成22年度、27年度、令和5年度自治体学会全国大会研究発表セッション報告者。

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