大正大学社会共生学部公共政策学科教授 江藤俊昭
2023年統一地方選挙が終わった。選挙に行かない(投票率の低下)、選挙に行けない(無投票当選者率の増加)といった、いわば地域民主主義の危機がより深刻化した。まさに、選挙という民主主義の空洞化が進行している。抜本的な対策を講じなければ地域民主主義は死滅する。民主主義を「ゆでガエル」にしてはならない。
なお、前回から今回までの4年間は、コロナ禍に翻弄された期間であった。コロナ禍で生活が困窮した住民、「通常の生活」が送れない住民に寄り添い、適切な対応を政治が行ったかどうかが問われた4年間でもあった。
本稿では、5回にわたり、政治の劣化(投票率の低下・無投票当選者率の増加)の打開策について、抜本的な議論と最近の動向を論じる。
【目次】(青字が今回の掲載部分) 1 選挙に行かない、選挙に行けない現実──民主主義を「ゆでガエル」に しないために 2 政治の劣化のデメリット 3 議員のなり手不足の要因 4 議員のなり手不足の打開の方途 5 正攻法の豊富化のもう一歩:選挙を意識する 6 なり手不足解消の特効薬:政治分野における男女共同参画推進法 7 選挙を活性化させる新たな自治の動き 8 なり手不足解消の方途の誤解 9 選挙制度への着目──地方政治の劣化の解消法のもう一歩 |
1 選挙に行かない、選挙に行けない現実──民主主義を「ゆでガエル」にしないために
(1)過去最低を続々記録する投票率の低下
統一地方選挙の統一率は、27%と低い。腐敗による議会の自主解散・首長辞職、リコールによる議会解散・首長辞職、体調不良・死亡による首長辞職、そして沖縄県の本土復帰等によって、統一率が低下した。さらに、東日本大震災の際に、市町村だけではなく、県レベルでも統一地方選挙を延期したこともあり、統一率は低くなっている。とはいえ、道府県の知事及び議会議員選挙が行われることが多いので、全く投票権を行使できない住民は少ない。
政治の劣化は進んでいる。投票率は、道府県知事選挙46.8%、道府県議会議員選挙41.9%、市議会議員選挙44.3%、町村長選挙60.8%、町村議会議員選挙55.5%と過去最低。投票率が増加する選挙もないわけではなかった。市長選挙は、過去最低だった前回から微増(47.7%(0.2%増))。区長選挙(45.8%)、区議会議員選挙(44.5%)も、微増だった。
新たな傾向も見られた。道府県議会議員選挙では、女性議員は14.0%と過去最高となった。また、市町村議会議員選挙では、2割を初めて超えた(22.0%)。町村議会議員選挙では、過去最高となったものの15.4%にとどまっている。なお、白井市、宝塚市、杉並区、埼玉県三芳町では、女性当選者数が半数を超えた(50%は、大阪府忠岡町、長野県朝日村、奈良県三郷町、日進市、武蔵野市)。杉並区議会では、52.1%となった。
このように、女性議員当選者率は増加しているが、いまだその程度である。また、当選率は、例えば道府県議会議員選挙では男性よりも8.8%低い。
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