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2022.12.26 政策研究

第33回 競争性(その2):競争相手の設定

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東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 金井利之

順位と格付け

 自治体は多数あることから、相互に比較できる。比較したときに、単に異同を認知することでとどまれば、競争は起きない。しかし、違いを見つけたときに、それを「順位付け」や「格付け」として位置付け、「順位」や「格」を上げて、追いつき、追い越すことを目指して行動するときに、あるいは、「順位」や「格」を下げないように、追いつかれない、追い越されないことを目指して行動するときに、競争が発生する。
 この競争は「独り相撲」になることもある。つまり、XはYとの差異をもとに、Yに追いつき、追い越そうとするときに、Xは競争性を持つ。しかし、Yが、追いつかれないよう、引き離すように競争するとは限らない。そもそも、歯牙にもかけないために、競争になっていないこともあろう。さらに、YはXの向上心に応えるべく、協力するかもしれない。
 とはいえ、YがXに迫られたとき、追いつかれそうなとき、追いつかれたとき、又は、追い抜かれたときには、YはXへの競争に方針を転換するかもしれない。あるいは、差異の距離を測って行動をしているという意味では、一見すると「余裕」を構えているときにも、潜在的には競争性の中にあるのかもしれない。
 しかし、Yは、Xに追い抜かれても、競争する気が起きないこともあろう。そもそも、自治とは、地域住民にとっての最善の治政を目指すものであって、他の自治体や地域との比較での「順位」や「格」を競うものではない、という考え方もある。追い抜かれたと考えないかもしれないわけである。地域住民が、他者との比較での「順位」や「格」で快感を覚えるような、マウント体質であるとは限らないからである。
 「ナンバーワン」ではなく「オンリーワン」の唯一性・個体性を目指すのであれば、そもそも競争性は成立しない。それぞれに違うのであるが、そこに「順位」・「格」の優劣は存在しないからである。もっとも、「オンリーワン」の唯一性を目指すこと自体が、競争性と無関係とは限らない。そこでは、唯一性・個体性を持つ自治体と、共通性・平凡性しか持たない自治体とで、質的に差異が意識されているかもしれない。その場合には、一直線上の「順位付け」や「格付け」の階層性はないとしても、卓越と凡庸の差異は存在している。その意味で、卓越性を目指す競争性の虜(とりこ)になっていることはあろう。

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金井利之(東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学))

この記事の著者

金井利之(東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授(都市行政学・自治体行政学))

東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 1967年群馬県生まれ。東京大学法学部卒業。 東京都立大学助教授、オランダ国立ライデン大学社会科学部行政学科客員研究員、東京大学助教授を経て、06年より現職。 専門は自治体行政学・行政学。主な著書に『自治制度』(2008年度公共政策学会賞受賞)、『原発と自治体』(2013年度自治体学会賞受賞)等。

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