東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 金井利之
自治体政策の固有性
自治制度は、しばしば、それぞれの地域実情に応じて、適切な政策決定を行えるような可能性を保障することを目的にしている。したがって、自治制度が全国画一的であっても、自治体ごとの政策が異なり得ることが、予定された帰結である。比喩的にいえば、自治制度が関数fであり、地域実情として投入されるべき変数をxとすれば、自治体nの政策ynは、
となる。つまり、地域1では、地域実情x1に応じて、政策y1となり、地域2では、地域実情x2に応じて、政策y2となる。地域実情が、地理的条件や歴史的蓄積に沿って、地域固有性を持っていれば、自治体政策も固有性を帯びるはずである。地域実情が、いくつかの自治体群で共通していれば、政策もその範囲で共通しているので、単独の個体自治体としては固有性は持たないことになる。
とはいえ、自治制度は政府組織を規定するものであって、そのまま政策を生み出すわけではない。自治制度の政府組織──例えば、直接公選首長と直接公選議会という機関とそれぞれの予算・条例・人事などに関する決定権限──に基づいて、具体的な政策決定がなされる必要がある。そして、自治体の政策決定に基づいて、主として行政職員を通じて、政策執行が行われる。その結果として、地域社会に対して政策出力となって現れる。
地域実情xnには、社会環境要因としての外部事項だけではなく、自治体組織の中で展開される一連の政策過程という内部事項も含まれる。自治体の政策過程としてパターン化されたものがあれば、政治構造である。政治構造も、多くの自治体を通じて共通のこともあれば、個々の自治体で異なる固有性を持つこともあろう。
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